2002年6月3日発売。
これはイギリスでの発売日。
ブライアン・ウィルソン出身のアメリカ本国より
早い発売日である。(アメリカでは2002年6月11日発売)
当時、『ペット・サウンズ』のアルバム週間売り上げの最高位は
イギリスが2位でアメリカが10位。
ブライアン・ウィルソンの自信作も
アメリカでは当時のビーチボーイズの人気を考えたら、それ程売れなかった。
本国より評価してくれた感謝が隠れているのだと思う。
アルバムの再現コンサートは洋楽のミュージシャンではそれなりに行われている。
ローリングストーンズ「スティッキー・フィンガーズ」、
日本では佐野元春が「Someday」の再現を行っている。
そうした名盤と評価されている再現コンサートは人気があるけれども、
この再現コンサートは
ある種「ブライアン・ウィルソン=ペット・サウンズ=天才」
というイメージの中で行われるだけに
ビーチボーイズ・ファンの中ではとりわけ話題性が大変強かった。
実際このコンサートは再現コンサートのみを行っていたわけではなく、
第1部は『ペット・サウンズ』以外の曲、
第2部が『ペット・サウンズ』の再現コンサートとなっていた。
アルバムの収録内容はその第2部のスタートから収録されていて、
2から14までが『ペット・サウンズ』を全曲を曲順通り、演奏している。
日本盤のみ2曲ボーナストラックが収録されていて、
これは第1部で演奏されたもの。
2曲とも『ペット・サウンズ』とも特に関連がない。
(2曲ともオリジナル音源は
ビーチボーイズ『フレンズ』(1968年6月10日)に収録されている)
内容としては全体的に落ち着きがある丁寧な演奏がで聴きごたえある。
音の配置もオリジナルの『ペット・サウンズ』がモノラルであったのに対し、
このアルバムは現代的な配置がされている。
『ペット・サウンズ』特徴づけるエコーの強いサウンドではない。
そういう意味で『ペット・サウンズ』の神秘性が減少しているといえるけれども、
僕はこのライブ・アルバムではその選択がベストだと思う。
当然、発売当時の1966年に楽器演奏面でこれ程、
個々の曲でも再現性のあるライブは聴くことはできなかった。
(そもそもオリジナル音源でビーチボーイズのメンバーは
コーラスとボーカルのみで楽器演奏していない。)
意外にもインストルメンタルの6、13は聴きどころで、
再現性が最も高く、演奏も丁寧で心地よい。
その再現性の強い演奏を聴いているからこそなのか、
ビーチボーイズ最大の魅力である、
コーラスの部分は
残念ながら物足りなさを感じ、ビーチボーイズと比べたら厳しいところがある。
11.「ヒア・トゥデイ」アウトロのスリルのあるコーラス部分が魅力だったけれども、
それがアレンジ上では再現することを心掛けているけれども、
やはりあのビーチボーイズのコーラスでないことを痛感させられる。
ただボーナストラックに当たる
15、16のコーラスはそれほど、感じなかっただけに、
曲によって落差を感じさせる。
特に夏をイメージさせるテーマにした、
そういった質感をもった曲であると差が出るということか。
このライブ音源を聴いていて、
『ペットサウンズ』の収録曲のライブが終わった後、
ひとつの物語を味わった気持ちが残る。
改めて『ペット・サウンズ』のアルバムの構成が素晴らしさに気づかされる。
いくらビーチボーイズの中心人物だとしても、
『ペット・サウンズ』はビーチボーイズの作品である。
実際、『ペット・サウンズ』は
ブライアン・ウィルソン以外のボーカルやコーラスの貢献が大きい。
さらにブライアン・ウィルソンの音楽は
ソロになってからは
かつてのビーチボーイズと違う世界観になっている。
にもかかわらず、この再現ライブの音源を聴いて違和感がない。
しかも
ブライアン・ウィルソンはかつての綺麗な声ではなく、しわがれている。
それどころか、このしわがれた声が
新たなペット・サウンズの世界を示しているようにさえ思える。
このことは、
『ペット・サウンズ』はブライアン・ウィルソンのソロに
なってからの世界観にどこか通ずるものがあるということなのだろうか、
あるいは、違う世界観から持ち込まれていても、
それに耐えられるだけの強度と普遍性があるということなのだろうか。
1.イントロ – “Show Intro” –
2.素敵じゃないか – “Wouldn’t It Be Nice” –
3.僕を信じて – “You Still Believe in Me” –
4.ザッツ・ノット・ミー – “That’s Not Me” –
5.ドント・トーク – “Don’t Talk (Put Your Head on My Shoulder)” –
6.待ったこの日 – “I’m Waiting for the Day” –
7.少しの間 – “Let’s Go Away for Awhile” –
8.スループ・ジョン・B – “Sloop John B” –
9.神のみぞ知る – “God Only Knows” –
10.救いの道 – “I Know There’s an Answer” –
11.ヒア・トゥデイ – “Here Today” –
12.駄目な僕 – “I Just Wasn’t Made for These Times” –
13.ペット・サウンズ – “Pet Sounds” –
14.キャロライン・ノー – “Caroline No” –
日本盤ボーナス・トラック
15.メント・フォー・ユー – “Meant for You” –
16.フレンズ – “Friends” –
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