ビル・エヴァンス 『ワルツ・フォー・デビイ』


ワルツ・フォー・デビイ+4

1961年6月25日、
ニューヨークのあるライブハウス(ヴィレッジ・ヴァンガード)にてライブ録音されたものだ。
このアルバムには
女性と男性がビル・エヴァンス・トリオの演奏をそっちのけで
おしゃべりする声が大量に聞こえる。
グラスの音も聞こえる。
酒も盛大に飲んで男性は女性との会話をお楽しみに、
おしゃれなムードの中に口説いていたのかもしれない。

僕がコンサートに出演する際、
演奏そっちのけで
男と女がまるで口説いているように
僕は演奏し歌いながら
その夢中になった会話を耳にしすることが、ある。
例えばバラードの中での、静かな空白から聞こえるそうした声、ノイズは
僕が伝えたい言葉(歌詞)よりも
退屈を嫌ったジェスチャーとして
コンサート会場に響かせているのかもしれない。

もちろん、あらかじめ僕の演奏を
かたむけている人がいることは知っている。
僕はそんなノイズ響く人だかりのなかに
集まった中で
演奏を傾けてくれる人、
そしてひそかに僕の音楽に耳をかけている人に、
願い込めるように演奏する。

50人いたとして、
僕は伝えようとしている音楽をどこかで聴き、
もしそのまなざしに気づくことが出来れば、
どれくらい救われた気持ちになるのか。
もし、そのまなざしに気づけたら。
僕はノイズよりまなざしに気づける力が欲しい。

ビル・エヴァンスは音楽に没頭し、一連のノイズが聞こえなかったのだろうか。
それともひそかに願いを込めるようにピアノの鍵盤をそっと触れ叩いていたのだろうか。

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