ブライアン・ウィルソン 『イマジネーション』


ブライアン・ウィルソン/イマジネーション 【CD】

1998年6月24日発売。
『ブライアン・ウィルソン』(1988年)以来、10年ぶりのオリジナル・アルバム
その間に人間関係のトラブルがあり、
2枚のアルバムを出しているけれど、それでも寡作という印象がある。

大半がジョー・トーマスと共作。
ジョー・トーマスは80年代から音楽業界に入り、CM音楽のプロデューサーとして活躍、
90年代にはレコード会社の社長となっている。
そこで様々なカントリーやAORのアルバムを制作する。
その流れでビーチボーイズがコーラスを担当し、
カントリー・シンガーがビーチボーイズ・ナンバーを
歌うという企画盤『スターズ・アンド・ストリップス』(1996年)も制作されている。

ジョー・トーマスはビーチボーイズのブライアン・ウィルソンのファンだったのだろう。
彼はブライアン・ウィルソンのソロ・プロジェクトのために
1996年末にレコード会社の社長を辞職。
このアルバムのデモを制作するために、
さらにブライアン・ウィルソンと共同で、
わざわざ土地を新たに買いそこでレコーディング・スタジオを建築し、
デモ・テープを制作する。
完成後、彼は自分の人脈で音楽業界の人たちへ売り込む。
売り込みによって、アルバム制作が決定すると、
さらに自身の人脈でミュージシャンを手配する。
ここまで大物になるとサポートされるスケールが大きい。

そういった経緯で制作された
このアルバムは
僕が思うに少なくても70年代以降の彼の実力を
顕著にあらわしているのだと思う。
70年代以降(60年代終わりから)、
彼は断片的にしか活動とアルバムを出すことしか出来なかった。

僕はこのアルバムを聴くたびに、
周囲がビーチボーイズの過去の遺産をなぞった方が、ビジネスになると思って
進めているところが大きいと思うけれど、
そういったことも結局本人のマーケティング上の決断力のなさから、
起きているのだろう。

このアルバムは
傑作と呼ばれる必要な要素である毒気や狂気さはあまりなく、
実力を発揮した、よくとらえている佳作となっている。

聴きどころは
1.「ユア・イマジネーション」
個人的にはソロとしては一番好きな曲。

5.「キープ・アン・アイ・オン・サマー」、
9.「レット・ヒム・ラン・ワイルド」の2曲は
ビーチボーイズ時代のセルフカヴァ―で
丁寧にアレンジされていると思う。
特に9.「レット・ヒム・ラン・ワイルド」はオリジナルの音源で
ややトチらかったサウンドであった。
(僕はそれでもオリジナルの音源が好きだ)
そのことにブライアン・ウィルソンは不満を感じていたのか。

セルフカバーは『駄目な僕-I Just Wasn’t Made For These Times』(1995)もあるけれど、
あちらはアコースティック主体のミニマムなアレンジであったのに対して、
こちらはスケールを大きくしAOR要素が大きいアレンジ。
このアレンジでセルフ・カヴァーを聴いてみたいと思った。
ただ結果的にアルバム収録曲に2曲のセルフカヴァーが存在することは
セルフ・カヴァーを聴くには物足りない、
すべてオリジナルで占めようとする視点では余計に思えると
居心地の悪い収録になっている。

ツメの悪さはあるけれども、丁寧さを感じさせるアルバム。

1.ユア・イマジネーション
2.シー・セズ・ザット・シー・ニーズ・ミー
3.サウス・アメリカン
4.ホエア・ハズ・ラヴ・ビーン
5.キープ・アン・アイ・オン・サマー
6.ドリーム・エンジェル
7.クライ
8.レイ・ダウン・バーデン
9.レット・ヒム・ラン・ワイルド
10.サンシャイン
11.ハッピー・デイズ

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