ブライアン・ウィルソン 『ブライアン・ウィルソン』


BRIAN WILSON(デラックス・エディション)

1988年7月12日発売。
46歳にして初めてソロ・アルバムを出す。
メンバーの中でもソロ・アルバムを出すことが遅かった。
(デニス・ウィルソン『パシフィック・オーシャン・ブルー』(1978年)、
カール・ウィルソン『カール・ウィルソン』(1981年)、
マイク・ラブ『ルッキング・バック・ウィズ・ラブ』(1981年)、
ブルース・ジョンストンはビーチボーイズ加入前に
センチュリオンズ ブルース・ジョンストン・サーフィン・バンド として
『サーファーズ・パジャマ・パーティー 』(1962)を発表している。)

理由はいくつかある。主に3つ。
真っ先に上がるのは、
ブライアン・ウィルソンは60年代後半から心身共に異常をきたすようになっていて、
60年代終わりには、とてもでないけれど、
まともに音楽活動することが不可能になっていた。

もうひとつは元々ブライアン・ウィルソンは
どう見ても、営業やマーケティングをする、
自身をアピールする、そういった行動力が欠けている人で、
その意味でソロ・アルバムを出す機会がなかったのかもしれない。

最後に思うのは、これは僕が大きく感じることなのだけれど、
そもそも彼はビーチボーイズの音楽の核になっていて、
彼が作曲したものは、大部分ビーチボーイズの曲になっていたところ。
例えば『ラブ・ユー』(1977年)といった、
どう見ても普通にグループとして発表するには無理がある曲でさえも、
ビーチボーイズの曲となっていただけに、ソロ・アルバムを作る理由がなかった。
にもかかわらずこのソロ・アルバムを作ったということは
ビーチボーイズから正々と距離を置くことを意味しているころなのかもしれない。
それはもうビーチボーイズはもはやオールディーズ・バンドに過ぎないということ
を表してしまった。
実際にすでに実質、空中分解していて
事実、このアルバム以降(本当はその少し前から)、
ビーチボーイズがブライアン・ウィルソンとマイク・ラブがと共に
活動することは断片的になり、
ビーチボーイズはマイク・ラブがビーチボーイズの過去曲だけのバンドになってしまった。

80年代になってから少しずつであるけれど、自身の心身がともに健康的になり
継続的に音楽活動が出来るようになっていた。
そしてもう既に彼はこの時点で、自身の名声は確率していたこともあり、
周りからサポートを十分過ぎる位もらえるようになっていた。
そうした内部的、外部的な環境が整ったことにより、
ソロ活動が可能になった。
この1988年にソロ・アルバム・デビューしたことは不自然ではない。

サウンドは全体的にリバーブが強く加工感の感じられ、エフェクト過剰に感じる。
プロデューサーも4人いる。アルバムの制作の苦労を感じられる。
決してアルバム全体の出来は悪くないけれども、もっと良くなったとも思わせる。
ただ当時はこのアルバムが出たこと自体が大きいのではないだろうか。
大滝詠一もこのアルバムについて、1988年にコラムを書きこう評している。
“元JRの400勝投手・金田正一が再びユニフォームを着て、現在の巨人を相手に投げ、
三振は1個も取れなかったが9回を投げきり、点数は沢山取られたが、それ以上の点を取ったので、
結果的には勝利となったいうのと同じような気がした。
プロ野球に興味のない人にはまるで何のことか解らないだろうが、つまり<夢のような出来事>という意味である”
(大滝詠一『レコード・コレクターズ増刊 大滝詠一 Talks About Niagara コンプリート・エディション』p427)

このアルバムはリハビリ感があって、
次のアルバム1991年頃に発表する予定だった『スウィート・インサニティ』は
より充実したアルバムとなり、完成間近だったにも関わらず、
このアルバムにまつわる人間関係が問題となり、結局発表されなかった。
そのことがこのアルバムの評価の焦点をぼかしているようにも僕は見える。
内容以上に出たことにインパクトがあるアルバムとなっている。

1.ラヴ・アンド・マーシー – Love and Mercy
2.ウォーキン・ザ・ライン – Walkin’ the Line
3.メルト・アウェイ – Melt Away
4.ベイビー・レット・ユア・ヘア・グロウ・ロング – Baby Let Your Hair Grow Long
5.リトル・チルドレン – Little Children
6.ワン・フォー・ザ・ボーイズ – One for the Boys
7.ゼアズ・ソー・メニー – There’s So Many
8.ナイト・タイム – Night Time
9.レット・イット・シャイン – Let It Shine
10.夢で逢いましょう – Meet Me in My Dreams Tonight
11.リオ・グランデ – Rio Grande

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