ブライアン・ウィルソン 『駄目な僕-I Just Wasn’t Made For These Times』


駄目な僕~I JUST WASN’T MADE FOR THESE TIMES

1995年8月15日発売。
ビーチボーイズ、自身ソロアルバム『ブライアン・ウィルソン』からの
セルフカヴァー集である。
このアルバムのプロデューサー、ドン・ウォズが映画監督を務めた
ブライアン・ウィルソンのドキュメンタリー映画
『駄目な僕-I Just Wasn’t Made For These Times』(1995年1月25日公開)
のサウンド・トラックとなっている。
タイトルはビーチボーイズの代表作『ペット・サウンズ』(1966年)に
収録されている曲「駄目な僕」(I Just Wasn’t Made For These Times)から。
ちなみにそのタイトルになった曲はこのアルバムに収録されていない。
収録曲は、基本的にビーチ・ボーイズの曲で他の人がボーカルを担当していた曲が多い。
サウンドは全体的にアコースティックなアレンジになっている。
往年の人が若い頃歌っていた往年の曲を
アコースティック・アレンジでセルフカヴァーしたという趣である。

話題性になる仕掛けをいくつか取り入れている。
6.「恋のリバイバル」ではブライアン・ウィルソンの実の娘、
カーニー・ウィルソン、ウェンディ・ウィルソンの二人がコーラスとして参加、
ただし注意して聴かないとそもそも女性コーラスが
参加しているのかすら、気づきにくいくらい目立たない。
9.「スティル・アイ・ドリーム・イット」は1976年にブライアン・ウィルソンがピアノの弾き語りで
デモ・レコーディングしたもの。
この曲は『アダルト・チャイルド』に収録する予定だったけれど、
アルバム自体がレコード会社により発売拒否され、曲そのものがお蔵入りになった。
また音源について言及すると
音質が悪く、演奏、歌唱も冴えているわけではない。
音楽として聴くにはつらいところがある。
ドキュメンタリ―と音源の希少性から入れたのだろう。
この2曲はアルバムに話題性を取り入れたものであるが、
上手くはいっていないと僕は思う。

個人的な聴きどころとしては、
ソロアルバム『ブライアン・ウィルソン』(1988年)に収録されていた
5.「ラヴ・アンド・マーシー」、10.「メルト・アウェイ」が聴きどころだと思う。
ビーチボーイズの曲はブライアン・ウィルソンのしわがれた声で
あまりセルフ・カバーを聴いている感じはないのに対して、
この2曲はオリジナル・アルバムに収録されているバージョンと
声が変わっていないだけに
別アレンジのセルフ・カバーとして、聴いて楽しめる。
しかもオリジナルの音源のアレンジがオーバープロデュース気味だったため、
オリジナル・アルバムに収録されていた音源よりも、味わい深く感じた。
10.「メルト・アウェイ」はこちらのバージョンの方が
トータル面で優れていると思った程である。

先ほどビーチ・ボーイズの曲について少し言及したけれど、
全く、新鮮味がないわけではない。
元々カール・ウィルソンが歌っていた2.「ジス・ホール・ワールド」や
オリジナル・アルバムでも自身がボーカルを担当していた
11.「TIL I DIE 」に表現の新しさを感じた。
奇しくも2曲ともブライアン・ウィルソン自身が作詞した曲で、
シンガーソングライターの趣が強い曲だからこそ、
説得力を感じたと書いたら、少しこじつけ感があるけれど、
このアルバムに収録されている他のビーチ・ボーイズ・ナンバーに比べて
リアリティーを感じたのは確かである。

このアルバムが発売時点では
ソロで発売されたアルバムは『ブライアン・ウィルソン』(1988年)のみ、
またこの頃は、90年代終わり以降から始まる精力的な活動をしていなかったため、
ブライアン・ウィルソンが露出し作品を発表すること自体に希少性があった。
そのことを考慮しないと、
今となっては
なぜこのアルバムをわざわざ出したのだろうと感じてしまうところは確かにある。
それでもこのアルバムのサウンドの個々に味わい深いところが隠れているところが
ブライアン・ウィルソンの奥深さと魅力なのだと思う。

1.メント・フォー・ユー - Meant for You –
2.ジス・ホール・ワールド - This Whole World –
3.キャロライン、ノー – Caroline, No-
4.風をふかせろ – Let the Wind Blow –
5.ラヴ・アンド・マーシー – Love and Mercy –
6.恋のリバイバル(フィーチャリング・カーニー&ウェンディ・ウィルソン) [feat. ウェンディ・ウィルソン & カーニー・ウィルソン] – Do It Again (featuring Carnie and Wendy Wilson) –
7.太陽の暖かさ – The Warmth of the Sun –
8.ワンダフル – Wonderful –
9.スティル・アイ・ドリーム・イット(オリジナル・ホーム・デモ’76) – Still I Dream of It (original home demo, 1976) –
10.メルト・アウェイ – Melt Away –
11.TIL I DIE – ‘Til I Die –

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