ザ・ビーチ・ボーイズ 『スマイリー・スマイル』


スマイリー・スマイル +5

1967年9月11日発売。
1967年5月、レコード会社キャピトルは
ビーチボーイズの新作予定であった『スマイル』の発売を中止を発表。
さらに6月16から18日に行われたモンタレー・ポップ・フェスティバルに出演をキャンセルする。
そのモンタレー・ポップ・フェスティバルに出演したジミ・ヘンドリックスが
「サーフ・ミュージックは終わった」と発言。
ビーチボーイズの凋落の始まりを象徴する言葉となった。

ブライアン・ウィルソンは『スマイル』を作れなかった。
このことにより、彼の評判と信用は大きく落とされ、
そこから元々良くなかった精神状態はさらに悪化し、
自身の音楽活動は低下し、自堕落な生活はますます拍車をかける。
ブライアン・ウィルソンの作曲も滞るようになる。
ブライアン・ウィルソンによる作曲が大半を占めていたビーチボーイズは
やがて、できる限り
ブライアン・ウィルソンの作曲に頼らず、他のメンバーも作曲するようになる。

この『スマイル』は
当時のブライアン・ウィルソンの期待値の高さと
後にその『スマイル』のために用意された音源が
レコーディング等の修正され、小出しに発表されたこと、
そしてビートルズ『サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド』(1967年)
にまつわる伝説といった等の複合的な理由により、
幻のアルバムとして有名になっていく。

その代わりとして発売されたアルバムが『スマイリー・スマイル』である。
内容は統一感がないどころか、
曲らしい曲があまりない
バラけたサウンド・コラージュをひたすら聴いているようである。
まるで『スマイル』のアウトテイク集を聴いているようである。
実感として1.「英雄と悪漢」と6.「グッド・ヴァイブレーション」以外、
唄を聴いている実感がない。

何故可能な限り、『スマイル』の代わりとして
アルバムをまとめられなかったのだろうか。
ブライアン・ウィルソン以外、ビーチボーイズとその周囲は
『スマイル』がどんなアルバムになるのかおぼろげでも、分からなかった。
その考え方も分からなくもないと思う。
けれどそれなら、何故既に存在している
「サーフズ・アップ」(『サーフズ・アップ』(1971年))や
「アワ・プレイヤー」「キャビネッセンス 」(『20/20』(1969))
といった音源をこのアルバムに収録しなかったのか。
僕は『スマイル』が完成できなかったことより、
スマイリー・スマイル』
(と次のアルバム『ワイルド・ハニー』(1967年12月11日))が
どうして発売されたことの方が謎である。

まるで、自分の実力の底を知られたくなくて、
わざとやる気のない素振りをする人間のようなアルバムである。
あえて邪推すると『スマイル』の実力なんてたかがしれているから、
まともにアルバムとして出さなかったような気さえする。
確かに僕自身『スマイル』自体、それほど評価はしていないけれど、
それでも可能な限りまとめて、
代理になるアルバムを発売して欲しかった。

1.英雄と悪漢 – Heroes and Villains
2.ヴェジタブル – Vegetables
3.フォール・ブレイクス・アンド・バック・トゥ・ウィンター – Fall Breaks And Back To Winter (Woody Woodpecker Symphony)
4.シーズ・ゴーイン・ボールド – She’s Goin’ Bald
5.リトル・パッド – Little Pad
6.グッド・ヴァイブレーション – Good Vibrations
7.ウィズ・ミー・トゥナイト – With Me Tonight
8.ウインド・チャイムズ – Wind Chimes
9.ゲッティン・ハングリー – Gettin’ Hungry
10.ワンダフル – Wonderful
11.ホイッスル・イン – Whistle In

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