ザ・ビーチ・ボーイズ 『サマー・イン・パラダイス』


Summer in Paradise

1992年6月1日発売。
ブライアン・ウィルソンが不参加のアルバム
ビーチボーイズでブライアン・ウィルソン好きだったら、
ないものとして扱われるアルバム。

例えばブライアン・ウィルソンが大好きな音楽評論家、中山康樹の著作『ビーチボーイズのすべて』という
ビーチボーイズの曲1曲ごとレビューしている本があるのだけれど、
このアルバムは見事に対象外となっている。

“2003年現在、ビーチボーイズ最後のアルバムは『サマー・イン・パラダイス』(1992年)になる。
だが”ビーチ・ボーイズ”とは名ばかり、
実質的にはマイクとプロデューサー、テリー・メルチャーのアルバムであり、
ビーチ・ボーイズの名を借りて出した企画盤にすぎない
(よって本書では断固として対象外とする。)
ちなみにそのアルバムにはカールもアルも1曲も提供していない。
いやマイクとのパワーゲームによって
提供させてもらえかったといったほうがいいかもしれない。”
中山康樹『ビーチ・ボーイズのすべて』p423

なんというすがすがしいまでの辛辣な言葉、
この引用文はある意味、中山康樹のビーチボーイズ観をよくあらわしている。

プロデュースはテリー・メルチャー
マイク・ラブとテリー・メルチャーが共作が7曲。
では、この名義がテリー・メルチャーでなく、
ブライアン・ウィルソンだったらアルバムの評価は大きく変わっていたのではないだろうか。
それを考えると、このアルバムは短絡的に評価を下げすぎなのではないだろうか。

決定的なヒット曲・強力な新録曲がないこと、
半分がセルフカバー、
またビーチボーイズファン人気のブライアン・ウィルソンが参加していないことから
このアルバムの評価が低いが、
僕としてはビーチボーイズにブライアン・ウィルソンが
絶対にいなければいけないと考えではないし、
例えばピンクフロイドでロジャー・ウォーターズが脱退し
デイヴ・ギルモアが中心になって活動して、
賛否両論あれど評価がそれなりにもらえているような、
ブライアン・ウィルソン色がない
テリー・メルチャー、ブルース・ジョンストン、マイク・ラブ中心での
ビーチボーイズの路線で成功してもらいたかったと考えている人なので
この路線が最終的に
あまりうまくいかなったことが僕は少し残念に思っている。
アルバムを通して出来自体は、
いう程僕は悪くないと思う。
むしろこの路線をもっとクオリティー深めたアルバムを聴きたかった。

1.はスライ&ザ・ファミリー・ストーンズの代表曲のカヴァー、
オリジナルはノスタルジーさも魅力だったけれど、
カヴァーバージョンはそれをなくし、その代わり爽やかさが魅力となっている。
このバージョンもいい。
12.はコメディ・ドラマ『フルハウス』で
有名な俳優ジョン・ステイモスがボーカルとして歌っている。
ジョン・ステイモスはこのアルバム発売前に『フルハウス』で
同曲を歌っている。(1991年2月15日放送)
またフルハウスでビーチボーイズが
出演したことがつながっているということなのだろうか。

内容はセルフ・パロディ感の強いアルバムなのだけれど、
ありそうであまりない80年代ビーチボーイズのサウンドと
ビーチボーイズの爽やかさを抽出した世界観が聴きどころである。
ジャケットのデザインもいい。

1.ホット・ファン・イン・ザ・サマータイム – Hot Fun in the Summertime
2.サーフィン – Surfin’
3.サマー・オブ・ラヴ – Summer of Love
4.アイランド・フィーバー – Island Fever
5.スティル・サーフィン – Still Surfin’
6.スロー・サマー・ダンシン – Slow Summer Dancin’
7.ストレンジ・シングス・ハプン – Strange Things Happen
8.リメンバー”ウォーキング・イン・ザ・サンド” – Remember “Walking In The Sand”
9.ラハイナ・アロハ – Lahaina Aloha
10.渚のボードウォーク – Under the Boardwalk
11.サマー・イン・パラダイス – Summer in Paradise
12.フォーエヴァー – Forever

コメント

  1. 馬渡 邦彦 より:

    今初めて聴いてます。1992年、福岡市内で高校3年、この頃には既にドップリ洋楽にハマって4年が経った頃。本屋の 狭いCDコーナーにこのアルバムの国内盤があったのを今でも何故かくっきり覚えている。あの時買わなかったのは、毎月1枚しか買う予算が無い中、当時は評論家のかまち氏が共著で記したロック決定盤を制覇する事に生き甲斐を見出していたのだが、ビーチ・ボーイズは既にTOSHIBAパスト・マスターシリーズ CD『ペット・サウンズ』で一応の目的は達成していたからだ。

    あれから何十年経ったのだろう。。
    その間、CBSソニーから70年代作品が
    出て来たが何故かスルー、いつの間にかそれが廃盤になってしまい、今度こそはと購入したのが、何故か当時市場で流行っていたボックスセットだ。ビーチ・ボーイズ初のそれを
    購入してから、いよいよハマる時が来た。
    でもそれすらも今は昔、唯一未聴だった当アルバムをようやく手にする事か出来た。

    UK盤だ。
    どうしても聴くだけでは嫌で、
    コレクターとしてはコレクションとしても
    どうしても手元に抱きたかった。
    US盤なら通常プラケースでは無いので
    購入条件は状態は必須、日本盤なら
    綺麗な帯は、ころも必須。

    そんな訳でして、
    今丁度聴き終わりました。
    紛れもなく、ブラインドしても、
    ザ・ビーチ・ボーイズです。
    バーズの味わいも堪りません、
    このアルバムは早速気に入りましたよ、
    同じく。気に入った以上は
    やはり、次はUSか国内かの
    どちらかが絶対に欲しいですね。

    ハンブルパイでも、
    こういった顕著な違いのある
    US盤とUK盤ありますが、
    90年代に入っても
    そんな事があるなんて。
    でもイギリスはペット・サウンズ当初から
    ビーチ・ボーイズ
    大好きな訳だから愛あるUK盤仕様ですね。

    ABBAで洋楽にのめり込む様になり、
    エルヴィスと出会って、
    そこから様々なジャンル、音楽の
    奥深さを教えて貰ったお陰で
    本当に心豊になりました。
    ビーチ・ボーイズの多様な変化にも
    難なく受容出来るのは、
    やはりエルヴィスの功績は
    計り知れない。
    ビートルズではなく、エルヴィスだった
    というのが自分史の要。

    それにしても良いアルバムだ。
    1985年のアルバムより
    好きかも?もしかしたら。

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