ビーチ・ボーイズ・パーティ<モノ&ステレオ> [ ザ・ビーチ・ボーイズ ]
1965年11月8日発売。
ビーチボーイズがスタジオ内でパーティーを開き演奏し、
録音されたアルバム。
そんなふうにかつては書かれていた。
実際は当然違う、いや違った。
だいぶ後になるまでこのアルバムに関する情報が乏しかったから、
このアルバムためのセッションが聴ける
『ビーチ・ボーイズ・パーティ ~アンカヴァード・アンド・アンプラグド』(2016年)
が発売されるまで、
はっきりとわからず、前述の俗説が定説のようになっていた。
ビーチボーイズはアルバムのノルマに追われていた。
もう一枚、冬のクリスマス商戦になる時期に
アルバムを発売できるようにレコード会社から要求されていた。
けれど、新たにアルバムを制作できるだけの曲のストックはなく、
また次のオリジナル・アルバムは以前より時間をかけて制作したい。
(その次のアルバムが彼らの代表作『ペットサウンズ』(1966年)となる)
かといってライブアルバム(『ビーチ・ボーイズ・コンサート』1964年発売)や
クリスマスアルバム(『ザ・ビーチ・ボーイズ・クリスマス・アルバム』1964年発売)
といった企画色のあるアルバムは
既に発売していた。
そこで実際は他のアーティストのカヴァーや
自分たちのコンサートの持ち曲をスタジオライブして
その音源から更に
笑い声や歓声、掛け声等を被せて
パーティーを開いて歌っているようなアルバムを作ることを思いつく。
ブライアン・ウィルソンのアイデアにより、
ただのスタジオライブは新鮮味を感じるアルバムとなった。
このアルバムのパーティ用にSEや歓声が被さっていない音源は
前述した『ビーチ・ボーイズ・パーティ ~アンカヴァード・アンド・アンプラグド 』
にて聴くことができる。
中身は
家でビーチボーイズがパーティで陽気に歌っているような光景が浮かぶ内容になっている。
サウンドは全体的にアコースティックなサウンドで、
わざとラフに演奏していて、楽しさを演出している。
カヴァーも、ビートルズ(2、3、6)、ボブ・ディラン(11)と
同時代に活躍したライバルともされている曲を選んでいることが面白い。
ただあまりにもラフすぎて
あくまでおふざけな企画で歌っていますという
エクスキューズがついているような感じがして少し残念。
逆にラフであることに興味を持つのが10.で
このアルバムの中で最もラフで
どれだけ崩して演奏できのるかということに挑戦しているかと思わせるぐらい。
このアルバム前述のように用意周到に作られたこと制作事情を知っていると
演奏の意図を知りたい。
思うに、もうメドレーで登場する2曲はこのアルバムが発売時点で
既に複数のバージョンがあって、
本当は収録させることに乗り気でなかったのではなかったのでは、
と思われる。
ただヒット曲やビーチ・ボーイズの顔になる曲を全く収録させないということは、
このアルバムを買うファンに申し訳なく、
またレコード会社的に却下される可能性があっての収録だと
僕は推測する。
(「アイ・ゲット・アラウンド」は『オール・サマー・ロング』のオリジナルバージョン、
『ビーチ・ボーイズ・コンサート』のライブバージョン。
リトル・デュース・クーペは『サーファー・ガール』『リトル・デュース・クーペ』にオリジナルバージョン、
『ビーチ・ボーイズ・コンサート』のライブバージョン。)
最後の12.はジャン&ディーンのディーンが参加。
(ブライアン・ウィルソンは彼らに「サーフ・シティ」を提供。1963年にシングルで全米1位になる。)
アルバムにはクレジットされていないが、
曲の演奏後に「hank you Dean」とブライアン・ウィルソンがいい、
ディーンが参加していることをほのめかしている。
この曲は1965年12月20日にシングルカットされ全米2位を記録。
アルバムを聴いていてラフさを感じる。
しかし録音のための5回のセッションが行われていて、制作に用意周到さと慎重を要している。
少し余談になるけれども、このアルバムの制作姿勢から見て、
僕は前年に発売したライブアルバム『ビーチ・ボーイズ・コンサート』は
実際にはライブ音源はあまり使用してなくて、
スタジオライブか元々スタジオで録っていた音源を使って
制作されていたのではないかとそれなりに思っている。
陽気であることを売りにしたアルバム。
陽気さと開放感、ビーチ・ボーイズの魅力の一つ。その強みを出している。
ビーチボーイズ最初の1枚とするにはきついけど、
ビーチボーイズをいくつかアルバムを集めて聴いている人には楽しめると思う。
1.ハリー・ガリー – Hully Gully
2.恋する二人 – I Should Have Known Better
3.テル・ミー・ホワイ – Tell Me Why
4.パパ・ウー・モウ・モウ – Papa Oom Mow Mow
5.マウンテン・オブ・ラヴ – Mountain Of Love
6.悲しみはぶっとばせ – You’ve Got To Hide Your Love Away
7.デヴォーテッド・トゥ・ユー – Devoted To You
8.アリー・ウープ – Alley Oop
9.ザアズ・ノー・アザー – There’s No Other
10.メドレー:アイ・ゲット・アラウンド/リトル・デュース・クーペ – Medley: I Get Around/Little Deuce Coupe
11.時代は変わる – The Times They Are A-Changin’
12.バーバラ・アン – Barbara Ann
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