ザ・ビーチ・ボーイズ 『M.I.U. アルバム』


M.I.Uアルバム

1978年10月2日発売。
『ラブ・ユー』(1978年)の次のアルバムは、
前作引き続いてブライアン・ウィルソンによるプロデュース作、
名前は『アダルト・チャイルド』というアルバムになるはずだった。
しかしレコード会社がアルバムのコンセプトをきらい、発売を却下、新たにアルバムを制作することを要求。

そこでビーチボーイズ側は
『ザ・ビーチ・ボーイズ・クリスマス・アルバム』(1964年)以来のクリスマス・アルバムを制作する。
しかしそれもレコード会社から発売を却下、
またしても新たにアルバムを制作することを要求。
そうして2度の発売を却下経てのこのアルバムの発売された。
このアルバムは『アダルト・チャイルド』に収録されるはずのいくつかの曲が変わっていて、
またプロデュースもブライアン・ウィルソンから
アル・ジャーディンとバックバンドでピアノを担当していたロン・アルトバック
と交代している。
(ただしブライアン・ウィルソンはエグゼクティブ・プロデュースとしてクレジットされている。
実態としては監修と見ていいと思う。)
内容も統一感がかなり減って、
レコーディング時期がバラバラの収録曲があって、つぎはぎ感の強いアルバムになった。

ブライアン・ウィルソンの不幸は『スマイル』が完成できなかったことでなくて
『ラブ・ユー』の次に当たる予定だった『アダルト・チャイルド』が、
さらに後にソロ活動することになって
『ブライアン・ウィルソン』(1988年)の次に当たる予定だった『スウィート・インサニティ』が、
そういったアルバムが本人による体調でなく、主に外的要因で発表できず、
結果的に助走(リハビリ)期間的な位置付けになるはずのアルバムしか
発売できなかったことによって
主に一般的な音楽リスナーからは無駄に天才と称されて
ソングライターとしての実力を過小評価されてしまっていることなのかもしれない。

ただし流通している『アダルト・チャイルド』の
上半身裸で帽子をかぶって、にんまりしているブライアン・ウィルソンのジャケットは
(個人的には閲覧注意レベルの)変質者にしか見えない。
もしこれがアルバム・ジャケットだとしたら
世界でもっともアウトなアルバム・ジャケットとして歴史に名を残していただろう。
(なお先に述べた『アダルト・チャイルド』『スウィート・インサニティ』は
海賊版として流通することとなる。
さらにクリスマス・アルバムのため制作された曲は12曲中6曲が『クリスマス・アルバム(完全版)』として
『ザ・ビーチ・ボーイズ・クリスマス・アルバム』に加えられた形で2007年に公式に発売されている。)

このアルバムの制作にあたって、
マハリシ・ヨギが設立したマハリシ国際大学にて
マイク・ラブが信奉者であったマハリシ国際大学というところで強引に行われた。
しかしそのせいで、ただでさえ結束力のないバンドに
チームプレイの欠如に拍車をかけさせ
マハリシ・ヨギの思想に批判的だった
カール・ウィルソン、デニス・ウィルソンが
マイク・ラブと対立することとなり、この大学でのレコーディングに不参加。
二人ともこのアルバムのレコーディングに
あまり参加していないこととなってしまった。

さらに、それを関連付けて
アルバムのタイトルは
レコーディングされたマハリシ国際大学(Maaharishi International University=M.I.U.)
から取られることになる。
ただし、アルバムのジャケットには「M.I.U.album」とのみ書かれていて、
タイトルの意味がわざわざ積極的に調べないと分からない。
ましてインターネットのない時代、結果的に「M.I.U.アルバム」という
意味不明なタイトルのアルバムになってしまった。
(意味が分かってもいいタイトルとはとても思えない。)

内容時には
久しぶりにブライアン・ウィルソンが無理やり感がなく、
普通に参加していることがまず魅力となっていて、このアルバムの売りとなっている。
数少ない参加したデニス・ウィルソンがボーカル、ブライアン・ウィルソン作の
「マイ・ダイアン」がカッコいいし、
「マッチ・ポイント・オブ・アワ・ラヴ」はどう見ても隠れ名曲だし、
派手さがなく平坦さを感じるがオールディーズにもなっていない、
ポップなアルバムとなっている。

1.シーズ・ガット・リズム – She’s Got Rhythm
2.カム・ゴー・ウィズ・ミー – Come Go with Me
3.ヘイ・リトル・トムボーイ – Hey Little Tomboy
4.コナ・コースト – Kona Coast
5.ペギー・スー – Peggy Sue
6.ウォンチャ・カム・アウト・トゥナイト – Wontcha Come out Tonight
7.スウィート・サンデイ・カインダ・ラヴ – Sweet Sunday Kinda Love
8.ベルズ・オブ・パリス – Belles of Paris
9.ピター・パター – Pitter Patter
10.マイ・ダイアン – My Diane
11.マッチ・ポイント・オブ・アワ・ラヴ – Match Point of Our Love
12.ウィンズ・オブ・チェンジ – Winds of Change

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