ザ・ビーチ・ボーイズ 『ゴッド・メイド・ザ・ラジオ〜神の創りしラジオ〜』


ゴッド・メイド・ザ・ラジオ~神の創りしラジオ

2012年6月4日発売。
デビュー50周年を記念して制作されたアルバム。
ツアーも世界各地で並行して行われた。
ブライアン・ウィルソン参加作品のオリジナル・アルバムとなると
『スティル・クルージン』(1989年)以来となるけれど
『スティル・クルージン』は曲を1曲提供したのみ、
アルバム全体での参加は『ザ・ビーチ・ボーイズ ’85』(1985年)以来。

ツアーとアルバムはビーチボーイズのメンバーにとって、
好感触だった。
この後、ビーチボーイズという名義でなくそれぞれ別に活動していた
ブライアン・ウィルソン、アル・ジャーディンは
このままビーチボーイズとして活動したかったらしいけれど、
それまでビーチボーイズとして活動していたマイク・ラブが拒否。
結局デビュー50周年記念して、一時的に合流したことに留まる。

アルバムの内容としてはブライアン・ウィルソンのソロ・アルバムに
マイク・ラブとアル・ジャーディンが参加したような性格がある。
もちろん、ブルース・ジョンストンとデヴィッド・マークスも参加しているけれど、
実感が起きない。
まず制作の体制がブライアン・ウィルソンのソロと変わらない。
このアルバム制作するにあたって
ブライアン・ウィルソンはジョー・トーマスと
2ndソロアルバム『イマジネーション』(1998年)以来、
再びコンビを組むこんだことになる。

加えてブライアン・ウィルソンのしわがれたボーカルが多いということも大きい。
ブライアン・ウィルソンがビーチボーイズとして
最後にアルバム全体に参加した作品『ザ・ビーチ・ボーイズ ’85』は
ブライアン・ウィルソンがボーカルを担当する部分が少なかった。
それまでもブライアン・ウィルソンのしわがれた声を
多く収録したビーチボーイズのアルバムは、
制作されたことがなかった。

このアルバムの参加ミュージシャンは大勢いる。
メンバー以外のミュージシャンは
ブライアン・ウィルソンとマイク・ラブがアルバム全体で参加していた
『ザ・ビーチ・ボーイズ ’85』よりもはるかに多い。
もともとビーチボーイズは初期の段階でメンバー以外のミュージシャン
が参加することが当たり前なのだが、
これだけ外部ミュージシャンが多いと、
ビーチボーイズとは、バンドというより主に
ブライアン・ウィルソンとマイク・ラブを
核にした集合的な存在なのではないかと思う。

ただ「ビーチボーイズ=ブライアン・ウィルソン」と考える人もいて
もし現在ブライアン・ウィルソンのソロを
ビーチボーイズとして出したら、
例えば『サマー・イン・パラダイス』(1991年)
(ブライアン・ウィルソン不参加のマイク・ラブが主体となって制作されたビーチボーイズのアルバム)
と違って歓迎していたのだろうか、と考えてしまう。

ブライアン・ウィルソンとマイク・ラブがビーチボーイズの核と先ほど書いたけれど、
実はこのアルバムでビーチボーイズを聴いた気持ちにさせることは
アル・ジャーディンの声による貢献がかなり大きい。
アル・ジャーディンの声は
声が変わる前のブライアン・ウィルソンとカール・ウィルソンの声に近く、
このアルバムでもその声は健在である。
このアルバムでアル・ジャーディンによってビーチボーイズらしいを実感できている。

7.「海に輝く夜明け」で
マイク・ラブがボーカルでアル・ジャーディンのコーラスが乗った曲が、
ビーチボーイズを聴いている感じをようやく出している。

ビーチボーイズのアルバムが久しぶりに登場したことは嬉しい。
ただそれでもこのアルバム、
ブライアン・ウィルソンのソロ・アルバムという顔が基本になっていて、
マイク・ラブとしてもデビュー50周年ということで、
この体制を割り切って受け入れたようで、
この体制のままで、
ビーチボーイズとしての活動を続ける気はなかったようだ。
実際にこの後、マイク・ラブはこのデビュー50周年に関係する活動が終わった後、
それまでのブライアン・ウィルソン、アル・ジャーディンとは袂を分かち、
分裂したビーチ・ボーイズの活動を再開している。

1.あの頃に… – “Think About the Days” –
2.ゴッド・メイド・ザ・ラジオ〜神の創りしラジオ〜 – “That’s Why God Made the Radio” –
3.今がその時 – “Isn’t It Time” –
4.スプリング・ヴァケーション – “Spring Vacation” –
5.ビルとスーの私生活 – “The Private Life of Bill and Sue” –
6.シェルター – “Shelter” –
7.海に輝く夜明け – “Daybreak Over the Ocean” –
8.心のビーチ – “Beaches in Mind” –
9.ストレンジ・ワールド – “Strange World” –
10.バック・アゲイン – “From There to Back Again” –
11.パシフィック・コースト・ハイウェイ – “Pacific Coast Highway” –
12.過ぎゆく夏 – “Summer’s Gone”-

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