ザ・ビーチボーイズ 『ラヴ・ユー』


ラヴ・ユー

1977年4月11日発売。
ブライアン・ウィルソンは前作『15・ビッグ・ワンズ』で
復帰を果たし(たことになって)、
そのアルバムも
「プロデュース=ブライアン・ウィルソン」とクレジットされていた。

更なる復帰を果たしブライアン・ウィルソンここにありと示すため、
ブライアン・ウィルソン好きには嬉しい、
アルバム全編の作曲に関わっているアルバムを制作された。
プロデュースも前作に
続いて「ブライアン・ウィルソン」と名義されている。

けれど肝心のアルバムの内容は
曲そのものがツッコミどころが多く
サウンドは今でいうと
宅録の初歩的なDTM操作で作った、結構ラフなデモ音源
のようなもので、
貧弱で使いこなせていないシンセの音が全体的に目につく。
また拙い演奏などで聴くにはつらい面があって、
(特にブライアン・ウィルソン自身によるドラム)
決してアルバムの完成度は高くはない。
ブライアン・ウィルソンが無理やり曲を作って、
演奏を披露した感がとても強い。

野球のピッチャーに例えると分かりやすい。
ある名投手が厳しいリハビリを経て
まだ故障上がりだけれど、先発で登板し
奇跡の復活を果たした。
ピッチング内容は6回5失点と終始苦しいピッチングをしていましたが、
味方の大量得点の援護のおかげで勝利投手になった。
それと同じようなものでこのアルバムは
ブライアン・ウィルソンの「天才伝説」を味わいたいためのアルバムなのだと思う。
(大滝詠一もブライアン・ウィルソンについて書かれていたとき似たような例えをしていた)

しかし当時のビーチボーイズの都合上、
どうしてもブライアン・ウィルソンにできる限り
(新作のアルバムに関しては)気を使って
仲良く合わせなければいけなかったのだと思われる。
そういう理由で変人ブライアン・ウィルソンの音に
主にコーラス面で協力している。

ブライアン・ウィルソンによる、ブライアン・ウィルソン好きのためだけのアルバム。
このアルバムの説明を果たすために、
何回「ブライアン・ウィルソン」という言葉を使ったのだろう。

もう少し、正確に書くと
厳しい言葉を僕はかけているけれど、それでも聴きどころはある。
サウンドには確かに味があって、
本人が不調ながら構築したシンセを大量に使ったサウンドは
このアルバムに収録されている当時の彼のガラガラな声もある種とともに、
角のあるスリルがあり、心地よくなる瞬間がある。
また彼がどんなに不調な時期でも、
新しいサウンド、表現を作ろうとしたことは、
少し感動できる部分がないわけではない。
ただ、それでも全体的に欠点の方が、どうしても目に余っていて
ビーチボーイズをこれから、聴こうという人や
60年代のプロデュースに「ブライアン・ウィルソン」とクレジットされた作品
(『サーファー・ガール』(1963年)から『ペット・サウンズ』(1966年)まで)
に感動した人が期待すると正直きついと思うのが本音である。

ビーチボーイズの作品の中でもかなり後回しに聴いた方がいいアルバムだと思うし、
もしかしたら、最後に楽しむ通なものだと思った方がいいのではないかと
僕は考えている。

レット・アス・ゴー・オン・ディス・ウェイ – Let Us Go on This Way
ローラー・スケーティング・チャイルド – Roller Skating Child
モナ – Mona
ジョニー・カーソン – Johnny Carson
グッド・タイム – Good Time
ホンキン・ダウン・ザ・ハイウェイ – Honkin’ down the Highway
ディン・ダン – Ding Dang
ソーラー・システム – Solar System
ザ・ナイト・ワズ・ソー・ヤング – The Night Was So Young
アイル・ベット・ヒーズ・ナイス – I’ll Bet He’s Nice
レッツ・プット・アワ・ハーツ・トゥゲザー – Let’s Put Our Hearts Together
アイ・ウォナ・ピック・ユー・アップ – I Wanna Pick You Up
エアプレイン – Airplane
ラヴ・イズ・ア・ウーマン – Love Is a Woman

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