ボブ・ディラン 『リアル・ライブ』


リアル・ライブ [ ボブ・ディラン ]

1984年12月3日発売。
1984年のヨーロッパのツアーの模様を
アルバム一枚に編集して、収録。

ツアーの時期は、アルバム『インフィデル』(1984年)に近く、
『インフィデル』にあった
3.「アイ・アンド・アイ」、4.「ライセンス・トゥ・キル」が
このアルバムにも収録されている。

ボブ・ディランのライブは
基本的にその時期のオリジナル・アルバムに
近いスタイルの演奏、スタイルで歌っている。
例えば、
ライブ・アルバム『激しい雨』(1976)は
オリジナル・アルバム『欲望』(1976年)、
ライブ・アルバム『武道館』(1978年)は
オリジナル・アルバム『ストリート・リーガル』(1978年)と関連づいた演奏である。
そこで『インフィデル』を気に入ってよく聴いている僕としては
『リアル・ライブ』に『インフィデル』のサウンドを期待していたのだけれど、
残念だけれど、このアルバムには
『インフィデル』の魅力であったサウンドの美しさはないと僕は思う。
『インフィデル』のサウンドは
エンジニアのエフェクトやレコーディングテクニック
によるものが大きいのかもしれない。

その代わりというわけではないけれども、
アルバムに収録された演奏やアレンジはどちらかというと
オリジナル・アルバムに収録されている
原曲に近いアレンジとなっていて、
癖がボブ・ディランとして少なめになっている。
このことがライブ盤の入門盤として間口が広いと言える。

演奏陣はミック・テイラー、イアン・マクレガンが
有名で、まだ老け込む年齢出ないはずなので
スリル感のある演奏をすれば、できるはずなのだけれど
ここでは無難な演奏に終始している。
ただどこか『インフィデル』に通じるものがあるのだろうか、
ボッブスを意識したような演奏になっている。

アルバム収録中3曲
(5.「悲しきベイブ」、6.「ブルーにこんがらがって」、7.「戦争の親玉」)
はボブ・ディランによる弾き語りで、
アルバム収録曲にバンドによる演奏、ボブ・ディランによる演奏と
ライブ・アルバムとしてバランスの取れた作品にしようと制作されている。

このアルバムの魅力は
前述したように、
往年の曲をオリジナルに近いアレンジで歌っていることである。
ボブ・ディランのライブ・アルバムは
のちにアーカイブとして発掘される「ブートレグ・シリーズ」を含めると、
時期ごとにしっかりと作品化されている。
けれど、ボブ・ディランは時期ごとに
演奏や歌唱のスタイルが変わっていて
例えば往年の曲を歌う『武道館』があるけれど、
あのアルバムで歌うボブ・ディランで
大きくメロディーを崩していて、原曲の世界観をとどめていない。
確かに個人的には往年の曲を『ストリート・リーガル』アレンジに変えているとして
『武道館』を楽しんで聴いている。
それは『ストリート・リーガル』を聴き楽しめ、
往年の曲の元々を知っているからである。
ボブ・ディランを聴き始めてライブ・アルバムを
オリジナル・アルバムに入っている原曲としてどう聴かせているのかと
手に入れるには、あまりおすすめできないアルバムとなっている。

それに対して、このアルバムはオリジナルに近いアレンジで
多くの人が初めに買うであろう
ボブ・ディランのオリジナル・アルバムの有名盤に収録された曲の
ライブ・バージョンとして楽しめている。

ただボブ・ディランの魅力というのは、
その時期にしか存在しない独自の演奏とアレンジであることも確か。
僕としてはそういう意味でこのアルバムを聴いて消化不良に感じた。
このアルバムをポップさとバランスを意識した間口の広いアルバムとみるのか、
懐メロ感が目に余るのかは評価の別れどころだと思う。

1.追憶のハイウェイ61 – Highway 61 Revisited –
2.マギーズ・ファーム – Maggie’s Farm –
3.アイ・アンド・アイ – I and I –
4.ライセンス・トゥ・キル – License to Kill –
5.悲しきベイブ – It Ain’t Me, Babe –
6.ブルーにこんがらがって – Tangled Up in Blue –
7.戦争の親玉 – Masters of War –
8.やせっぽちのバラッド – Ballad of a Thin Man –
9.北国の少女 – Girl from the North Country –
10.トゥームストーン・ブルース –

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