ボブ・ディラン 『ブリンギング・イット・オール・バック・ホーム』


ブリンギング・イット・オール・バック・ホーム

1965年3月22日発売。
バックにバンド演奏することは初めてではなく
シングルのみで発売された『ゴチャマゼの混乱』(1962年)、
『フリーホイーリン・ボブ・ディラン 』(1963)の「コリーナ、コリーナ 」がある。
ただこれらの曲はあくまでバンドで
ブルース、あるいはロックンロールをやろうとしていて、
質感が違う。

このアルバムのバンド演奏による質感は
1964年の初頭ビートルズのアメリカ上陸から始まる、
ブリティッシュ・インヴェイジョン
(イギリス出身バンドのアメリカへの成功)
が大きく影響を受けている。

ブリティッシュ・インヴェイジョンにより、
アメリカのポップチャートは様変わりする。
この事態にボブ・ディランも黙って見ることはなかった。

僕が思うに、ボブ・ディランは
風に吹かれるような飄々とした人ではなく、
常に時代を強く意識して行動する人だと思う。
少なくてもある時期までは確かにそう思える。

フォークをやったことは、
ボブ・ディランのルーツだったからでなく
当時の時代の最先端だったことが大きいと思う。
1964年までは、バンド演奏によるロックンロールはアメリカでは下火であった。

ここに来て、イギリスから新しい音楽がやってきた。
アメリカの従来あったロックンロールとは違う質感の違う音楽、
この音楽をロックンロールではなく、ロックと呼ぶ。
多くのアメリカの若者が飛びついたように、
ボブ・ディランも飛びついた、
あるいは意識せざるを得なかったというのが実情だと思う。

この変わり身がボブ・ディランの行動力なのだが、
しかしそれでもこのアルバムは
まだロックになりきれていない部分もある。
アルバムの半数がギターの弾き語り、
あるいは弾き語りを中心にした曲が収録されてあり
従来のアルバムの部分をまだ引きずっているところが見られる。
それとも一応従来のファンにも配慮をしたのかもしれない。

それでも従来のフォークを期待していた人にとっては
失望を隠せないものが少なからずいた。
しかしそれ以上にこのアルバムは多くの人に受け入られ、
ファンを増やすことに成功する。
アルバムの売り上げはこれまで以上に伸び、
ビルボードで初のトップテンを記録している。
(ビルボード・トップ LP’sで6位、それまでは『時代は変る』の20位が最高)

1.サブタレニアン・ホームシック・ブルース – Subterranean Homesick Blues –
2.シー・ビロングズ・トゥ・ミー – She Belongs to Me –
3.マギーズ・ファーム – Maggie’s Farm –
4.ラヴ・マイナス・ゼロ/ノー・リミット – Love Minus Zero/No Limit –
5.アウトロー・ブルース – Outlaw Blues –
6.オン・ザ・ロード・アゲイン – On the Road Again –
7.ボブ・ディランの115番目の夢 – Bob Dylan’s 115th Dream –
8.ミスター・タンブリン・マン – Mr. Tambourine Man –
9.エデンの門 – Gates of Eden –
10.イッツ・オールライト・マ – It’s Alright, Ma (I’m Only Bleeding) –
11.イッツ・オール・オーバー・ナウ、ベイビー・ブルー – It’s All Over Now, Baby Blue –

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