ザ・ビーチボーイズ 『エンドレス・サマー』


終わりなき夏(エンドレス・サマー)(紙ジャケット仕様)

1974年6月24日。
ベスト盤である。
ビーチボーイズのベストアルバムやコンピレーションはとても多い。
ただこのアルバムは
大量にあるビーチボーイズのベスト、コンピレーションの中で
とりわけ語ることがある。

このアルバムはビーチボーイズの活動史にも大きな影響を及ぼしている。
ビーチボーイズは60年代の終わりからアルバムの売り上げが低迷していた。
そうしたためで、主にコンサートに力を入れていた。
それは現在のマイク・ラブ主導のビーチボーイズと同じように、
1970年代前半の時点で
ビーチボーイズはオールディーズバンドとして活動していたようにも見える。
そんな状況の中での、
ビーチボーイズにとって何度目か(アメリカでは4度目?)のベスト盤である、このアルバムが発売される。

結果は『ビーチボーイズ・コンサート』(1965年)以来、
そして最後の2度目のアルバムチャート1位を獲得する。
このアルバムによってビーチボーイズの人気は過熱させる。
低迷したオールディーズバンドとしてライブ活動するのみで
キャリアを終えようとしていたビーチボーイズに光が照らされた。
このリバイバル、大ヒットによって
ビーチボーイズはこの機会を幸いに
商売気たくましく、2年の間に、ベスト盤を立て続けに出す。
『スピリット・オブ・アメリカ』(1975年4月、全米8位)
『グッド・ヴァイブレーション』(1975年6月、全米25位)
『20ゴールデン・グレイツ』(1976年6月、ランク圏外)

そして一連のベストアルバムの乱発でベスト盤を売っても
あまり売り上げが上がらなくなると見ると
ビーチボーイズは
決して心身良好でないブライアン・ウィルソンを無理やり担ぎ出し
「ブライアン・イズ・バック」というキャッチコピーで
ブライアン・ウィルソンがついに復活したとキャンペーンをする。
そしてここから、立て続けに無理やり
ブライアン・ウィルソンがプロデューサーとクレジットされた、
オリジナルアルバムが立て続けに出ることになる。
(『15・ビッグ・ワンズ』(1976年7月)『ラヴ・ユー』(1977年7月))

選曲が素晴らしい。
しかも明るいポップ一辺倒でなく、曲の流れも絶妙でに配置されている。
一通り聴いている、ひたすらビーチボーイズのポップスさを感じさせる。
よくビーチボーイズといったら、ブライアン・ウィルソンの苦悩の物語が有名だけれど
そんなこと知らず、ひたすら陽気で美しいポップスとして楽しめる。
しかも面白いのは『ペット・サウンズ』から、そして『ペット・サウンズ』以降から
1曲も選ばれていないこと。
(1987年にCD化されたときに「グッド・バイブレーション」が追加されている)
残酷なまでに余計な「芸術性」など要らないかまでのすがすがしい選曲だ。
ビーチボーイズはブライアン・ウィルソンの苦悩を楽しむ音楽ではない。
少なくても僕はそう思う。

そしてこのジャケットとアルバムのタイトル
このどこかにありそうで、存在しない幻想的な夏の世界を感じさせる。
メンバーのイラストも存在しないどこかにいるようだ
タイトルのビーチボーイズとは何かという端的に答えている
「エンドレス・サマー」という幻想的なタイトルがコンセプトとなり
ただのベスト盤を超えた魅力がある。

1. サーフィン・サファリ -Surfin’ Safari –
2. サーファー・ガール -Surfer Girl –
3. キャッチ・ア・ウェイヴ -Catch A Wave –
4. 太陽あびて -The Warmth Of The Sun –
5. サーフィンU.S.A. -Surfin’ U.S.A. –
6. ビー・トゥルー・トゥ・ユア・スクール -Be True To Your School –
7. リトル・デュース・クーペ -Little Deuce Coupe –
8. イン・マイ・ルーム -In My Room –
9. シャット・ダウン -Shut Down –
10. ファン・ファン・ファン -Fun, Fun, Fun –
11. アイ・ゲット・アラウンド -I Get Around –
12. 浜辺の乙女 -Girls On The Beach –
13. ウェンディ -Wendy –
14. レット・ヒム・ラン・ワイルド -Let Him Run Wild –
15. ドント・ウォリー・ベイビー -Don’t Worry Baby –
16. カリフォルニア・ガールズ -California Girls –
17. ガール・ドント・テル・ミー -Girl Don’t Tell Me –
18. ヘルプ・ミー・ロンダ -Help Me, Rhonda –
19. 素敵な君 -You’re So Good To Me –
20. オール・サマー・ロング -All Summer Long –
21.グッド・ヴァイブレーション – Good Vibrations -(CDのみ)

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