1989年6月1日発売。
ここからユニコーンの路線は確立する。
歌詞が3枚目やコメディ要素、
社会的なことを全面的に織り交ぜるようになってアルバムのカラーになった。
ただサウンド面はある程度、
前作の『PANIC ATTACK』(1988年)を引き続いていて、
これがいい意味でサウンドがすがすがしい2枚目となり
次のアルバムの『ケダモノの嵐』(1990年)と違うところだけれど、
僕はこのアルバムの表現が気に入っている。
おそらく笹路正徳がこのアルバムのサウンドの主導権を持っていて、
それがすがすがしい2枚目サウンドと
なっているのではないかと考えられる。
次のアルバム『ケダモノの嵐』からユニコーンが主体となって
サウンドを作っていて、
そこが違いだとなって表れていると思われる。
老人の顔がアップとして使われるジャケット。
おそらく山形の実力者、服部敬雄を表したいのだと考える。
ただそのことに気付かなかければ、
シュールさが出てコメディっぽさを醸し出しだしているようにも見える。
全曲アレンジ 笹路正徳、UNICORN
1.ハッタリ
編曲:笹路正徳
アルバム収録曲とこれまで発表した曲の
オーケストラによインストゥルメンタルをメドレーにしている。
コンサートのオープニングを表している。
笹路正徳がオーケストラアレンジを担当。
序盤はテンポの速い、オーケストラで後半落ち着くと聴きごたえがある。
ただの前奏のインストとして聴くには少しもったいない出来である。
(曲目:おかしな2人~ツイストで目を覚ませ~抱けないあの娘~
Maybe Blue~Fallin’ Night~ペーター~I’M A LOSER~パパは金持ち~君達は天使)
2.ジゴロ
作詞:奥田民生 作曲:川西幸一
メンバーでなく、子供が歌っている。
しかも歌詞は荒ぶった大人の男性が主人公のはずで
あえて不釣り合いの唄を歌わせることでコメディ(演劇)っぽさを出しているのだろうか。
3.服部
作詞・作曲:奥田民生
ようやくユニコーンが登場。
1曲目と2曲目はユニコーンの演奏がなかった。
長い前奏だった。
歌詞の主人公は自分が無敵で意のままにすべてを操れるという自信家。
山形の実業家で実力者として権力を持っていた、
服部敬雄がモデルとなっているといわれる。
サウンドや歌詞がバンドとして
3枚目だと無理やりにも強調したような曲で、
今までのユニコーンとは違うということ示しているのだと思う。
ただ元気と若さを感じさせる演奏と奥田民生の歌唱が心地よい。
4.おかしな2人
作詞・作曲:奥田民生
バンドブーム感が全開出ている勢いのある楽曲。
ときには音楽面で否定的なニュアンスで語られるバンドブーム、
しかしこの曲ではバンドブームのカッコよさが
上手く抽出されたような形になっている。
オーソドックスなバンドサウンドで
時代の空気感を感じさせるシンセも魅力的。
このアルバムのハイライトなんじゃないかと思うくらい強力な曲。
5.ペーター
作詞・作曲:堀内一史
ジャズっぽいイントロ。
童謡ぽいメロディー。
アルバム2曲目でボーカルをやっていた少年の名前だけれど
そのことについて唄ったということだろうか。
6.パパは金持ち
作詞・作曲:奥田民生
Aメロ、Bメロ、サビのメロディーの展開が面白い。
サビの堀内一史が「パパは金持ち」と歌うフレーズにスリルを感じる。
アウトロで急にサウンドがサンバになるところが
次の曲につなげると同時に遊び心を出す。
7.君達は天使
作詞・作曲:堀内一史
サンバで曲がつながっている。
8.逆光
作詞・作曲:阿部義晴
このアルバムのなかで急に生真面目になった感がある。
コメディ要素の曲が占めるアルバムの中で
バランスをとっているのか。
間奏はじめのサウンドにカッコよさを感じる。
9.珍しく寝覚めの良い木曜日
作詞・作曲:手島いさむ
レゲエが基本となっている。
でもレゲエになりけれず、
バンドブーム期のバンドサウンドと合わせて
ユニコーンの独自のサウンドとなっている。
10.デーゲーム(服部仕様)
作詞・作曲:手島いさむ
このアルバムの発売後、
1989年9月1日に「坂上二郎とユニコーン」名義でシングルとして発売。
シングルバージョンでは坂上二郎をボーカルとして起用されている。
曲は野球のデーゲームについて
ノスタルジックで
サウンドはインドの要素を取り入れている。
ビートルズ風のコーラスを入れていると詰め込んでいるといい、
アウトロのサウンドエフェクトといい。
神秘さを出そうとしている。
11.人生は上々だ
作詞:川西幸一、阿部義晴 作曲:奥田民生
打ち込みっぽいサウンドの中に
サーフィンサウンドが少し取り入れて
今度はサビにビーチボーイズ風のコーラスが登場。
歌詞をよく読むと結構あぶない内容だけれど
メロディーが
とてもキャッチーで底抜けに明るいコミカルな曲。
サビの繰り返し部分は曲のキーが段々と上がり、
メンバーたちがちゃんと音程取れずに歌うことになっている。
総じて聴いていて楽しい曲。
12.抱けるあの娘
作詞・作曲:奥田民生
ミュージカル風の曲。
前作『PANIC ATTACK』にあった
「抱けないあの娘-Great Hip in Japan-」
を意識してつくられたように見える。
コミカルな楽曲の中で
サビのゴージャスなサウンドが華やかさを感じて心地よさを感じる。
13.大迷惑
作詞・作曲:奥田民生
ユニコーンの代表曲で、
この曲から現在にいたるまでのスタイルが確立したともいえる曲。
1989年4月29日にシングルとして発売。
デビューして2年たってシングルデビュー。
詳細が不明ながら、売り込みに対して方向転換したと考える。
プロモーションビデオも印象的で、オーケストラに合わせて、
奥田民生が暴れている姿は楽しい。
お金が掛かっていると分かるプロモーションビデオ。
けれど、この映像撮る予算が足りなくて
エキストラが雇えず、観客となる人はスタッフ一同が
私服を着て客席に座って進められた。
それでも人が足りず、ブロックごと座って、編集でごまかしていたらしい。
80年代、90年代は
大手レコード会社が
ミュージシャンに投資が出来ている時代だったけれど、
それでも当時のユニコーンはまだブレイクしきれていなかったから、
予算はそれなりに限度があったという、らしい話。
内容は
若いサラリーマンの転勤にまつわるコメディ。
そのこと仰々しいオーケストラと相まって茶番劇らしさを表現する。
終身雇用前提の会社勤めが壊れかけている今では、
歌詞の世界観が時代的で
少し空気感が違っていて面白い。
けれど最後の方に出てくる「お金なんてちょっとでいいのだ」
というフレーズは
今でも変わらないメッセージだと僕は感じられる。
ただ30年近くたった今でも、
未だにそういう社会にはなっていない。
細かいことだけれど、曲のフェイドアウト加減が上手い。
14.ミルク
作詞・作曲:奥田民生
赤ん坊についての唄って、このアルバムを終わらせている。
ジャケットに映っている老人が、アルバムのスタートだとしたら、
人の誕生から終わりまでがコンセプトとして
匂わせているように思えてしまった。
この曲を聴いているなかで、
ある種一巡させたような気持ちにさせられる。
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