UNICORN 『ケダモノの嵐』


ケダモノの嵐 [ ユニコーン ]

1990年10月1日発売。
バンドブームの中の代表的なバンドなのだが、
サウンドはバンドを軸にしつつ実に多彩で、丁寧な作りこみがいい。
やはりただタレント性だけで売れていたバンドでないことがわかる。
というより、この音の多彩さは当時ちゃんと評価されていたのだろうか。
3カ月連続アルバムリリースの中の最初のひとつで
続く『おどる亀ヤプシ』(1990年11月1日)、『ハヴァナイスデー』(1990年12月1日)
は企画色が強く
3つのアルバムの中で王道のアルバムとなっている。

ジャケットはレコーディングスタジオ、あるいはリハーサルスタジオ
で集合写真を取っている。バンドであることを実感させられる。

アルバム初回盤の帯はデザインが面白い。
ジャケットのメンバーの集合写真で
ドラムの川西幸一だけが写った位置の関係上、
本来は帯に隠されるようになるはずだった。
ただアルバムの初回盤の帯は
帯で隠される川西幸一の顔の部分だけ、
丸くくりぬかれ、矢印を向けて「この人がドラム」と書かれている。

全編曲: UNICORN

1.命果てるまで~第三の男~命果てるまで
作詞・作曲:奥田民生
ウクレレを軸にした音だが、
エレピ、ピアノ、サウンドエフェクト、ドラムと控え目だが豪華なサウンドになっている。
間奏でアントン・カラスの第三の男が挿入されている。
まだパブリックドメインになっていないために「第三の男」とタイトルで書かれているのだろうか。
1990年10月21日にシングルとして発売された。

2.フーガ
作詞・作曲:堀内一史
結婚がテーマの、バロック音楽風のメロディーが出てくる曲

3.ロック幸せ
作詞・作曲:川西幸一
気が抜けた元気なコミックロックソング、脱力系でUNICORNに合う歌となっている。

4.ケダモノの嵐
作詞・作曲:奥田民生
このベースはライブで再現できないと昔、
ベーシスト堀内一史が音楽雑誌で語っていた記憶がある。
それは確かなことなのか、確かめている最中だが、
それはそれとしてベースはフューチャーしている。
「カッコいいバンドの演奏」を体現している。

5.エレジー
作詞・作曲:奥田民生
サビにダークさを感じる歌詞があり、しかしそれほどシリアスに感じないのは
UNICORNの健全なバンドとして僕が感じているからだろうか?

6.自転車泥棒
作詞・作曲:手島いさむ
王道なメロディアスで、歌詞も直球の青春ソングで
高校時代にはこのアルバムの中で、もしかしたら1番好きな曲だった。
『おどる亀ヤプシ』で収録されていた「12才」といい
こういう手島いさむが手掛ける王道のJpopタイプの曲が好きだった僕は
やはり90年代のJpopに育ち、そのタイプに近い曲が好きだったのだと実感する。

7.富士
作詞・作曲:阿部義晴
富士山登頂について歌っている、素朴さを感じる。
「自転車泥棒」に近い曲調だからここに収録されたのだろう。

8.リンジュー マーチ
作詞・作曲:奥田民生
歌詞は天国にいった人、
フォーククルセダーズの「帰って来たヨッパライ」と同じテーマで
この曲はオマージュとして意識したのだろうか。

9.スライム プリーズ
作詞・作曲:堀内一史
スライムをテーマにした歌。
演奏やサウンドでできるだけ持たせている感がある。

10.CSA
作詞・作曲:阿部義晴
52秒の短い歌、パンク調の歌。
早口でソニー・ミュージックエンタテインメント(SME)の前身である、
当時のバンドの所属事務所であるCSアーツ(CSA)の住所と電話番号を歌詞にしている。
今その場所にいってもビルは別の所有者になっている。

11.いかんともしがたい男
作詞・作曲:奥田民生
憂鬱なサラリーマンが無気力になった歌。
この無気力感のあった歌詞、世界観に当時妙に共感もっていた。
閉鎖した日本は昔から変わんなかったのかなと今聴いて感じた。
英語のカウントが流れるが、この音作りに丁寧さを感じる。

12.夜明け前
作詞・作曲:阿部義晴
前曲の無気力感、閉鎖感を感じた後、
1分4秒、無演奏で阿部義晴の声のみ、
その後、エレピと阿部義晴のシンプルな歌。
アルバムの構成の妙だろうか。心にはいってくる。

13.働く男
作詞・作曲:奥田民生
忙しすぎるサラリーマンについて歌ったテーマ。
「夜明け前」で終わらないのがユニコーンらしさなのだろう。
全裸の外国人が出てくるPVが印象的。
最後のフェイドアウトの仕方が何気にインパクトあって好きだ。
1990年7月21日にシングルとして発売されている。

14.スターな男
作詞:阿部義晴 作曲:奥田民生
1991年1月21日にシングルとして発売。
シングルはミックスを変え、「スターな男 “異ミックスド”」として収録されている。
現在だったら
ベストアルバム『Quarter Century Single Best』に収録されているので、
シングルバージョンはそちらが一番手軽に手に入ると思う。
ミックスの主な違いはシングルバージョンでは演奏をメインにし、
ボーカルを遠ざけている。あきらかに違う。
洋楽っぽい仕上がりにしようとしていると思われるが、
アルバムバージョンの方が僕はいいと思う。

内容はロックバンド全開の歌で、スターな男がそのもののテーマで
メロディーが歌謡的なのが面白い。
派手な2曲を最後にもっていくあたりが
ユニコーンは明るくてコミック要素をもったバンドだとイメージさせたかったからなのだろう。
最後は阿部義晴のキーボードソロ、手島いさむのギターソロ、奥田民生のギターソロで終わる。
バンドブーム感が出ている。
「最後はオレ」といって弾く奥田民生のワイルドなギターソロがカッコいいと思っていた。

コメント

タイトルとURLをコピーしました