小沢健二 『球体の奏でる音楽』


球体の奏でる音楽

1996年10月16日発売。
ジャズ色が強いアルバム。
というより楽器編成がアコースティックなのが特徴で、
その延長でアルバムとして特徴づけるためにジャズアレンジの曲を
取り入れたのではと僕は考えている。

「Alé?」「みんなで練習を」は良く言えばリプライズ、
実際は曲として成立しているとは言い難い。
そう考えると、このアルバムの収録曲は実質6曲になる。
さらに「旅人たち」は「球体の奏でる音楽」に歌詞をつけ、アレンジを変えたもの。
これも違う理由で(どちらかを)1曲としてある意味カウントしにくいと考えることができる。

アルバムの収録曲で独立した作品だけ絞ると
「ブルーの構図のブルース」「大人になれば」「ホテルと嵐」「すぐに会えるかな?」と
「球体の奏でる音楽」(か「旅人たち」のどちらか)の計5曲である。

この見方で考えるとアルバム『球体の奏でる音楽』は
シングル『大人になれば』の拡大版と見えなくもないと思う。
(シングル『大人になれば』、1996年9月30日発売。
「大人になれば」「球体の奏でる音楽」「大人になれば (inst.)」の3曲を収録。
 大人になれば (inst.)はアルバム未収録)

1、2、4、8で渋谷毅(ピアノ)、川端民生(ベース)が参加している。
僕は「みんなで練習を」を除く、
この参加曲の3曲こそ、このアルバムを特色づけていると考えている。
他の収録曲、「すぐに会えるかな?」「旅人たち」は
例えば『Life』に収録していても浮いた形にはならないと思う。
(それでもミキシングをし直さなければいけない可能性もある)
アルバム構成でボリュームの少なさをしのいだアルバムともいえる。

作詞・作曲・編曲:小沢健二、
球体多重奏団”オーケストレーション・指揮(ストリングアレンジ):服部隆之

1.ブルーの構図のブルース★★★
ピアノのオブリガードがやや耳につくときがある。
ピアニスト渋谷毅を特徴づける(featuring)ためにこうなったと思うのだけど、
ピアノの音色をもう少し柔らかくして欲しかった。

2.大人になれば★★★★☆
「ブルーの構図のブルース」で気になったピアノの音色も
ここでは気にならない。
前述通り、シングルとして発売された。

3.Alé?★
曲と単独では評価不可能。
ただ「球体の奏でる音楽」のメロディーを演奏していることから、
このアルバムのテーマ「球体の奏でる音楽」を強調する役割には
なっていると思う。
「球体の奏でる音楽」のメロディーは8曲中3曲流れる。
それでいてどれも形が変え、くどく聞こえないようにしている。

4.ホテルと嵐★★★★☆
ポップスを感じられ、そこにジャズアレンジを取り入れた曲。
演奏にスイング感じる、小刻みなピアノが気持ちよい。

5.すぐに会えるかな?★★★☆
前述のように「すぐに会えるかな?」「旅人たち」は
仮に『Life』に収録されてもおかしくないサウンドをしている。
ただこの曲、『Life』にないリラックスした表現がある。

6.旅人たち★★★
どちらが先にできたのかが分からないが
「球体の奏でる音楽」に歌詞をのせた歌ものとして存在している。
伴奏はハープのみ、弾き語りに近いのだが、
ギターやピアノでなくハープにしたことにより、
「球体の奏でる音楽」につなぐ流れをつくり、
この曲と「球体の奏でる音楽」をいい意味で気安くさせずに済むようにしている。
そこにブラスバンドの練習風景を見せる(ように演出している)
「Alé?」「みんなで練習を」が入り方向づけている。

7.球体の奏でる音楽★★★
本作のテーマ曲。
僕はこの曲をテーマ曲にすることで曲として強度を高め
アルバムにコンセプトをもたらしていると思う。

8.みんなで練習を★
曲単独では評価不可能。
これも「Alé?」と同様、テーマ曲を強調する役目になっている。
この曲は「ホテルと嵐」の練習風景のように感じられる。
「ホテルと嵐」には参加していなくて、
アルバムでこの曲にしか参加していない演奏者がいる。

もしかしたら練習風景として演出しているに
過ぎないのではと考えられる。
この用意周到さが小沢健二のプロデュース力を感じられる。

ただジャズ色の強い曲を収録されていると考えると見落としがちだが、
このアルバム構成の作りこみが、
僕はアルバムのボリュームの少なさ、寂しさをカバーしていると考えている。

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