Mr.Children 『Versus』


Versus

1993年9月1日発売。
ジャケットからファーストアルバムからのシティポップ路線を継承しているのが
伺える。
個人的には「innocent world」で路線を変更したと考えられ、
シティポップとしてはこのアルバムがほとんど最後の時期だと思う。

海外録音も行われている。
ウォーターフロントスタジオであり、
後のアルバム『深海』でアナログレコーディングを行う場所である。
このアルバムで予めレコーディングを行ったことで
『深海』のクオリティーを担保するために必要なことが行われている。

作曲は小林武史がアルバム曲の6曲、関わっている。
しかし桜井和寿単独で作詞・作曲した作品が曲としての完成度が高く、
何故全曲、桜井和寿で作詞・作曲しなかったのか、少し謎である。

一説には奇数が暗い・翳りある曲と偶数が明るい曲にするようアルバムは構成され、
それで「Versus」(対)という意味でアルバムのタイトルにしたらしいが、
僕は本当にそうなっているのか、疑わしいと思う。
6「蜃気楼」は翳りのある曲で、7「逃亡者」は歌詞は暗いといえるが曲調は明るい。
3「and I close to you」も暗い・翳りがあるかといえばその要素がある程度で、
僕は明るい曲に分類されると思う。

ただ1stアルバム『Everything』、2ndアルバム『kind of Love』より
ロックバンド色が強まっていったことは確か。

このアルバムは
Mr.Childrenがシティポップを表現するバンドとしては限界であった部分と
そこからはみ出し「等身大」を表現するバンドとして大成する部分が
垣間見える。

作詞作曲:桜井和寿(1,4,8,10)
作詞作曲:小林武史(7)
作詞作曲:桜井和寿 & 小林武史(6)
作詞:桜井和寿 作曲:桜井和寿 & 小林武史(2,3,5,9)
全曲編曲:小林武史 & Mr.Children

1.Another Mind★★★★
歌詞が時代的(これは当時からやや古かったのではないか?)、
アレンジが必ずしも上手く構築されているわけでもないのに、
これだけ惹きつけられるのは、
歌詞の世界観とそれに合った桜井和寿の青い歌唱、この曲のメロディー素晴らしさなのだろう。
曲のポテンシャルは高い。それを引き出し切れずにいるのが惜しいと思う。

2.メインストリートに行こう★★★☆
歌詞の「仲間達がいう程 君って クールじゃないのがいいね」
という一節のが洗練さの全面肯定していない。
ここに素朴さを感じ洗練さをある意味得意にして
「シティポップ」の範疇に収まることを嫌っていたのかもしれない。

3.and I close to you★★★
ファンクナンバーだけれど、演奏面でそうなり切れずにいるのが
逆にポップスさを感じる。
ストレートな、桜井和寿の色気が感じる歌唱も聴きどころ。

4.Replay★★★★☆
恐ろしくポップスなメロディーとアレンジのなかで、
鈴木英哉のドラミングが素晴らしい。
シングル『Replay』として1993年7月1日に発売されている。

5.マーマレード・キッス★★★
1~4とポップスが並ぶ中のスローバラード。
ここで色合いを変えるための曲だと僕は思う。

6.蜃気楼★★☆
ミディウムな曲。
アレンジがとっちらからっている。
「気狂いピエロ」「狂った果実」と自分の心境を映画に例えている部分も効果的でない。

7.逃亡者★★☆
鈴木英哉が歌っている。
Mr.Childrenで小林武史が単独で作詞・作曲した作品はこれのみ。
歌詞の内容はやや人間不信、厭世的で
この時期の桜井和寿が書かない表現している。

8.LOVE★★★★
アルバムを通して聴くとポップさが甦った気にさせる。
それぐらいポップスとしての完成度が高い。

9.さよならは夢の中へ ★★★
メロディは美しくこの曲の桜井和寿の歌唱は素晴らしいのだが、
残念ながら楽曲のポテンシャル生かし切れていない。
その意味では「Another Mind」以上に惜しい。

10.my life★★★☆
「62円の値打ちしかないの僕の」
がインパクト同時に等身大さを感じさせる。

62円とは当時の郵便(封書25g以内)の値段、現在(2017年)は82円。

ただ相手にとってどうでもいい人の手紙は
残念ながら興味のないダイレクトメールのようで
62円の価値どころか、1円もないとはっきり言っておきたい。

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