小沢健二 『犬は吠えるがキャラバンは進む』


犬は吠えるがキャラバンは進む

1993年9月29日発売。
1991年9月にフリッパーズ・ギターが解散する。
その後、1992年に渡辺満里奈に「バースデイ ボーイ」「夜と日時計」を曲提供するが、
ソロデビューするまでの間の活動らしい活動はこれしか行っていない。

このブランクが
1998年以降のブランク以上に僕には謎で興味深いのだが、
果たして一体何をしていたのか。
サウンドを研究し、ソロとしてどう活動しようか考えていたのだろうか。

「犬は吠えるがキャラバンは進む」(the dogs bark, but the caravan goes on)
という意味はアラブの方の諺で
ネットで調べて集約すると「雑音を気にせず進め」といった言葉らしい(ほんとか?)
小沢健二自身のライナーノーツでも
細かい意味は分からないがこのアルバムのタイトルにしたという意を書いてあったが、面白い言葉だと思う。

内容は改めて聴くと、音の少なさに驚く。
オーガニックなサウンドで弾き語り中心の音作りで音が少ないのではない、
普通に音が少ないのだ。
下手をすれば、デモを聴いているような感覚になるのだが
それでも音を足せば、楽曲のクオリティーが上がるのか判別が難しく、
この世界観でここしかないサウンドは出している。
(『dogs』だと音圧をあげて、音が少ない感触を減らしている)

歌詞は文学的な言葉が並んでくる中で、チクリとストレートに辛いメッセージが出てくる、
この後「王子」として売り出していた時期と比べたら、言葉が重い。

再発版として1997年7月24日『dogs』と改名され、ジャケットが変更され、内側のライナーノーツがなくなった。
オリジナル版のままであってほしかった。

01.昨日と今日★★★★
夕暮れから真夜中、街で起きている出来事を淡々と、しかし鮮やかに奥行き深く描く。

「皮肉屋たちが 行く先も無いまま 街に深く深く深く溺れて死んでゆく」
という言葉、
「俺はただ待っているラジオを切って」いる主人公の姿勢が
「犬は吠えるがキャラバンは進む」という言葉を採用した世界観につながり、
しかし決して楽観的な姿勢は見せてはいないと感じる。

02.天気読み★★★★☆
簡潔だがいかように読み取る歌詞、だけど辛辣なメッセージはない。
1993年7月21日ソロデビューシングルとして発売された。

03. 暗闇から手を伸ばせ ★★★★
低いテンションの曲調のなかで、ポジティブでストレートなメッセージが並ぶ曲。

04.地上の夜★★★★
メロウという言葉が似あう曲調、生きることを肯定するような歌詞の幸福を感じられる。

05.向日葵はゆれるまま★★★☆
ピアノの伴奏と歌のみの構成。
ラブソングになりそうな曲調で、そうでもない歌詞である。

06.カウボーイ疾走★★★★
意味深に叙事が並ぶなか、
「もう間違いが無いことや もう隙をみせないやりとりには嫌気がさしちまった」
という言葉が印象的に残る。

07.天使たちのシーン★★★☆
13分31秒あるの大作。
オリジナル版にはあったライナーノーツに
「このCDを買った中で最も忙しい人でも、どうか13分半だけ時間をつくってくれて、
歌詞カードを見ながら”天使たちのシーン”を聴いてくれますように」と書いてある。
当時の小沢健二本人とっての重要視していた曲。

なぜジャケットが変わったのか?
ジャケットデザインの世界観が気に入らなくなったからか、
「犬は吠えるがキャラバンは進む」というタイトルが気に入らなくなったからか、
もしかしたら「天使たちのシーン」に対する考えが変わったからなのだろうかと
考えることがある。

08.ローラースケート・パーク★★★★
「ローラースケート・パークで滑って回ろう」と主人公が遊びに誘い、
そこからカラフルな叙事が書かれている。

サビの最後に
「ありとあらゆる種類の言葉を知って 何も言えなくなるなんてそんなバカなあやまちはしないのさ」
という言葉が残る。

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