初恋の嵐 『初恋に捧ぐ』


初恋に捧ぐ

2002年8月21日発売。
まるで幻のようなバンドである。
バンドは最終的に西山達郎(ギター、ボーカル)、隅倉弘至(ベース)、鈴木正敏(ドラム)の3人がメンバー。
このアルバム制作途中にギター、ボーカルの西山達郎が急性心不全により亡くなり、バンド活動は停止。
残ったメンバーで最終的に制作されている。

ボーカルテイクは主に音質面で必ずしもベストと言いづらく、恐らくリハーサルで歌ったテイクを採用していると推測される。
バンドメンバーはギター、ベース、ドラムの3人だが、
スタジオミュージシャンを多く起用されそれがこのアルバムの完成度を高めている。
この後10年後、リマスターしスタジオライブを追加した『初恋に捧ぐ プラス』 (2012年6月27日)
『セカンド』(2016年1月27日)が発売されているが、内容は充実しているとは言い難く、
むしろ本当にもう音源が残っていないことを痛感させられた。

西山達郎の才能の限界を見せることはなく、
もっと曲を聴きたかった。
だけどとりあえずこのアルバムが、ある。

作詞作曲 西山達郎

1.初恋に捧ぐ
★★★★☆
さわやかなポップチューン。
オルガン(シンセ)の使い方が上手くとにかくさわやかだという印象が作っている。
スピッツがカバーしたけれど、こちらのバージョンの方が良く聴こえるのは
こういった作りこみがあるからだ。

2.真夏の夜の事
★★★★☆
生ストリングが効果的に使われている。
「想像のストーリーではない 真夏の夜の事」という
歌の主人公が現実に起きたこととする最終フレーズで
山本太郎と緒川たまきが出演されているPVは秀逸。

3.NO POWER!
★★★★
オーソドックスなロックビートが進む中、シンセとピアノの音色が効果的に心地よく使われている。

4.touch
★★★☆
バンドメンバーだけの演奏に近い。
間奏のビブラフォンが中だるみしかけているときに現れ効果的に使われている。

5.罪の意識
★★★
このアルバムは
アルバム構成がとても分かりやすく整備されている。
代表2曲+ロックナンバー3曲+バラード3曲+ボーナス曲という構成。

参考にレーティングを入れているのだが、ロックナンバー3曲の中で個人的には一番曲が弱いと考えている。
そのため、3曲の中の一番後ろに置いているとも考えているのだが
ここから怒涛のバラード曲が続く。

6.涙の旅路 (SLTS.Ver)
★★★★☆
ギターソロはアルバムクレジットを見る限り西山達郎自身となっている。聴きごたいがある。
SLTS.Verはもっともボーカル・西山達郎の声を聴くことができる。
この声を聴くたび、このアルバムはボーカルの綺麗に取られた音源で聴きたかった。

7.nothin’
★★★★★
歌の主人公はかなり虚勢を張っているようだ。
初恋の嵐はさわやかなポップバンドと見られることがあるが、
「初恋に捧ぐ」がむしろ異色に近く、さわやかさを感じる曲は少ない。
初めて制作されたアルバムが
しんみりしたバラード曲が多いという理由で『バラードコレクション』と名付けられたように
西山達郎は実際は翳りを作る曲が得意だったのだろうと考える。
それでも初恋の嵐の中で「Untitle」と並ぶ最もヘビーな部類に入る。

8.good-bye
★★★★
このバラードでアルバムの終わりを感じさせる。

9.星空のバラード [Rare Live Track]
★★☆
5分の無音後にボーナストラックとして収録されている。
もともとは『バラードコレクション』の収録曲で
音質は悪く、居心地が悪いように存在している。
初恋の嵐、西山達郎に起きた悲劇を感じさせるために、
あるいは好意的に見れば鎮魂曲として
この曲をこの場所に置いたのだろうけど
僕は必要なかったと思う。
そんな演出を必要としないくらいこのアルバムの収録曲の水準、完成度は高い。

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