沢田研二 『G.S.I LOVE YOU』


G.S.I LOVE YOU

1980年12月23日発売。
G.Sというのはグループサウンズの略で
かつて沢田研二はタイガースのボーカルとして活躍していた。
タイトル通り見ると原点復帰として見られるが
あまりそういう性格はなく、80代サウンドにG.Sが乗っかったようなサウンドになっている。
当初から明確にニューウェーブにG.Sを合わせたサウンドにしようとコンセプトを決めていた。
アレンジはすべて伊藤銀次が担当している。
当時のプロデューサーがコンセプトにあったサウンドを構築する人を探している中、
佐野元春『Back To The Street』を聴いて決めたそうだ。
そのつながりで佐野元春にも当時の沢田研二のプロデューサーが曲提供を依頼したのだろうが
当時伊藤銀次は佐野元春プロデュースを担当していた。
なお詳しい制作秘話は伊藤銀次のブログ「サンデー銀次」で詳しく書かれている。
それなりに長い量なので読み応えがある。

なお伊藤銀次によれば
このアルバムのミックスエンジニア吉野金次の仕事ぶりが気に入り
佐野元春は『SOMEDAY』のミキシングに吉野金次を起用したのではと振り返っている。
初期の佐野元春を知る資料としても貴重だと思う。

”ちょうど佐野君からの電話がかかってきた。とても興奮していた。彼も「G. S. I Love You」のテスト盤を聞いた直後だったのだ。
「銀次、ミックスを聞いたかい?」「ああ、いま聞いてたとこなんだけど、なんかすごいことに … 。」と、
僕が最後までいい終わる前に、
「銀次、NOISEだよ。あれはすごい曲だ。今年一番のロック・チューン。吉野さんはグレイト・ロックンロール・エンジニアだよ。」”
https://ameblo.jp/ginji-ito/theme2-10054352040.html

佐野元春が3曲(3,8,11)提供している。
後にこの3曲は佐野自身でカヴァー(『NIAGARA TRIANGLE Vol.2』(3)『SOMEDAY』(8,11))されている。
コーラスでも参加(2,3,8,10)している。
佐野元春のアルバム『Back To The Street』『HEART BEAT』の頃のかなり青い声をしている。

1. HEY!MR.MONKEY(ヘイ!ミスター・モンキー)
作詞:糸井重里/作曲:沢田研二
右側でディレイがだいぶ遅れているが少し気になる。
ただこれは吉野金次がこの曲における演奏の音の振り分けも含めて、
意図的に行ったもの。
この癖をどう評価するか、僕は少し癖がありすぎると思う。

2. NOISE(ノイズ)
作詞:三浦徳子/作曲:加瀬邦彦
イントロにSEとして街のノイズを入れている。
吉野金次はこのイントロのSEを録るために、
アシスタントに新宿の表通りの街のノイズを録るように
指示をした。

3.彼女はデリケート
作詞・作曲:佐野元春
エレピがだいぶフューチャーしたアレンジ。
「NOISE(ノイズ)」のアウトロからつなげ、ドラムのフィルで焦らすイントロ。
面白くていいイントロだなと思っていたけれど、
これは伊藤銀次が意図したものでなく
このアルバムのミックスを担当した吉野金次が行ったもの。

4.午前3時のエレベーター
作詞:三浦徳子/作曲:かまやつひろし
5.MAYBE TONIGHT(メイビー・トゥナイト)
作詞:三浦徳子/作曲:鈴木キサブロー
6.CAFEビァンカ
作詞:三浦徳子/作曲:かまやつひろし
僕はここでようやくG.S.というタイトルらしさが出たなあ、と感じた。
作曲がかまやつひろし。かまやつひろしはザ・スパイダースの中心メンバーで
まさにG.Sの歴史を作った人物。

伊藤銀次はビートルズ 「Till There Was You」を意識したそうだ。
ベースが吉田健がウッドベースを弾いている。
彼は大学時代ウッドベースでジャズを弾いていた。
そのことでビートルズ 「Till There Was You」よりもジャズ色は出るようになった。

7.おまえがパラダイス
作詞:三浦徳子/作曲:加瀬邦彦
加瀬邦彦はザ・ワイルドワンズのメンバーで音楽の中心的存在だった。
かまやつひろし、加瀬邦彦がこのアルバムの中でG.S色を出す役割を果たしている。

8.I’M IN BLUE(アイム・イン・ブルー)
作詞・作曲:佐野元春
伊藤銀次によれば、ビートルズの「Anytime At All」を意識したそうだ。

9.I’LL BE ON MAY WAY(アイル・ビー・オン・マイ・ウェイ)
作詞:三浦徳子/作曲:伊藤銀次

伊藤銀次がアレンジを組み立てている最中に突然曲ができ、
プロデューサーに気に入られ、収録されることとなった。

10.SHE SAID……(シー・セッド)
作詞:三浦徳子/作曲:加瀬邦彦
11.THE VANITY FACTORY(ヴァニティー・ファクトリー)
作詞・作曲:佐野元春
ローリングストーンズを基本にキーボードを追加したアレンジ。
初めて聴いたときローリングストーンズの「Under My Thumb」
にリズムが似てるなあと思ったけど
アレンジャー伊藤銀次本人がそれを意識したとブログで書いているの読んだとき
僕は思わずにんまりしてしまった。

11.G.S.I LOVE YOU
作詞:MARIA MESSINA/作曲:沢田研二
全編英語の曲で素朴な讃美歌のような曲。
アルバムの最初と最後に沢田研二作曲した楽曲が配置されているのは
意図的なのだろうか。

81年の音楽番組「ベストテン」をYoutubeで見た。
その年を振り返る総集編で沢田研二が出演していた。
僕はそのとき沢田研二がベストテンで
比較的下位で自分の曲が紹介されたとき
「この曲で(今年の)僕は終わりだ!」と叫び気味に突っ込んでいたことが
印象に残っている。
そのときの沢田研二は常に前へ上を見ていたのだと思う。

決して70年代の栄光を残すことなく、自分のスタイルを更新しようとする姿勢が
このアルバムにも出ていると思う。
佐野元春関連としてこのアルバムを手に入れたのだが、
思いのほか沢田研二が気になりだした。
機会があれば、別の作品もレビューしたいと思う。

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