岡村靖幸 『yellow』


yellow

1987年3月21日発売。

岡村靖幸のデビューアルバムである。
それ以前には渡辺美里、吉川晃司に曲提供をし作曲家として
活動していた。
作曲家デビューは渡辺美里「GROWIN’ UP」(1985年8月25日リリース)
岡村靖幸自身はシンガーソングライターデビュー前提に作曲家とし
ての活動をしていたのかどうかはわからない。

ミックスエンジニアはLarry Alexander(2、3、4、8)と
坂元達也(1、5、6、7、9)の二人で曲ごとに分かれている。
とりわけリズムの強いダンスナンバーをLarry Alexander、
それ以外を坂元達也が担当と振り分けられているようだ。

歌詞は主人公が感情を一歩引いて歌っていることがあり、
このアルバム独自の作風である。

しかしこのアルバムの最大の特徴は
ドラムが生ドラム主体といったところである。

個人的にはこのアルバムが他の岡村靖幸作品と違うと感じさせるのは
確かに歌い方、歌詞、ドラム以外の音色・アレンジの変化も印象が大きく変わる要因ではあるが、
一番大きいのは
この生ドラム、特にドラムのフィル有無によるものが大きいと考えている。
次のアルバムから生ドラムが激減し、打ち込み主体となる。
岡村靖幸としては異色である。

全作詞作曲 岡村靖幸(特記以外)
3.作詞 神沢礼江
全編曲 岡村靖幸・西平彰

1.Out of Blue★★★★★
デビュー曲である。

イントロがカッコいい。
特にエレキギターのリフが始まるまでの
ドラムのリムショット、ローファイのオルガン、その後にシンセの音が入る箇所は
少ない音、しかし退屈させないために聴かせるアレンジのお手本のようなものである。
音色の大切さ、音の振り分け(パンニング)、空間の使い方を痛感させる。

歌詞、メロディー共に
岡村靖幸作で、もっともストレートで王道のJpopである。
しかも、後の打ち込み主体になる前でかつ8ビートの曲であることから
珍しくロック色が強い。

2.Young oh! oh!★★★★☆
ギターのカッティング、ドラムのフィルの音が気持ちいい。
演奏の気持ちよさを感じさせる。

岡村靖幸のアウトロの特徴のひとつである
デタラメ英語をまくしたてるのはここから始まる。

俺全身でカッコいいことしているぜっていうことが伝わってきて微笑ましい。

3.冷たくされても★★★☆
本人が作詞していない作品である。
そのため岡村靖幸の歌詞が好きな人にとって
この曲をもの足りないと感じる人もいるようである。
しかしこの歌詞自体はよくできており
今となっては本人以外の歌詞作をもっと聴きたかったと個人的には考えている。

特に歌詞が書けなくなったことで寡作になってしまったという説があるなら
なおさらである。

メロディーもキャッチーであり、聴いていて心地の良い作品。

4.Check Out Love ★★★★
「newton なんかの言葉じゃ Babyだまされない」という歌詞のフレーズが面白い。
変わったいい回しだけど、これが岡村靖幸の歌詞の魅力なんだよなと思わせる。
まず初めに
その前の「友情なんか、僕は欲しくない」というフレーズの「友情」と韻を踏むために考えたと思う。

そしてフレーズの意味としては「本当のことは世の中にある現実や事実とは限らない」という
2曲後の「Water Bed」の語り部分に近いニュアンスと考えているのだが、
そこを「newton~」と表現するところがにくい。

その他お気に入りの歌詞のフレーズが多い曲だ。

5.はじめて ★★
イントロなしの歌いだし、
ピアノ伴奏主体で進み、
アウトロで突然オーケストラ、バンドが入りゴージャスになり、時間はアウトロの方が長い。
構成自体は不思議で
面白いといえば、面白いが奇抜以上の魅力はないと思う。
むしろ楽曲の弱さがこの不思議なアレンジになるに至ったと邪推してしまう。

6.Water Bed★★★
歌パートより間奏が聴きどころの曲である。

間奏に語りの部分があり、そのことが岡村靖幸らしさを感じさせるが、
個人的にはその後の「one、two、three、four」で「four」をフォーと叫び声を掛け合わせ、
プリンスの真似のような声を出す流れが面白い。

アウトロのギターカッティングの気持ちよさにサウンドへのこだわりを感じる。

7.RAIN★★★
「Out of Blue」同様のアップテンポのロック色が強い曲。
ただアレンジ自体それ程さえていない。
アレンジを変えたら、評価が大きく変わる可能性がある。
歌詞もこのアルバム特有の表現である。

個人的にはこの曲を聴くといつもどことなく井上陽水が歌いそうな曲だな、と思ってしまう。

8.彼女はScience Teacher★★★★
ファンクサウンド全開で
サウンドに傾けるととにかく心地よく、気持ちいい。
生演奏主体のファンク曲は貴重でしかも、演奏は名演。
アルバムには演奏者がクレジットされているが、出来れば曲単位で知りたかった。

歌詞は設定自体がやや変わっているといえなくもないが
内容はいかにもよくある求愛的な歌詞で、言葉そのものも平凡である。
しかし後に歌詞に対する意識を上げ、彼独特の作風が出来、評価されるのと同時に
歌詞を書くこと自体に苦悩することになると考えると複雑である。

演奏の心地よさを感じるかどうかで、評価が大きく変わる曲である。

9.White courage★★★★★
岡村靖幸作で最も知られていない名曲
アコギ、ピアノ、オーケストラの空間の広がりが素晴らしい。

歌詞も控え目に愛を語っているところが魅力的。
「いくつものwhite angelが空から こぼれ笑いながらとけてく…救われた気持ちさ」
というフレーズは情景が浮かび、心に残り続ける。

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