ザ・ビーチボーイズ 『カール・アンド・ザ・パッションズ – ソー・タフ』


カール&ザ・パッションズ~ソー・タフ

1972年5月15日。
アルバムの制作に先立ちカール・ウィルソンの推薦で
ドラムスにリッキー・ファッターとシンガーにブロンディ・チャップリン
が加入する。
デニス・ウィルソンが手を怪我したことにより、ドラムを当分叩けないことがきっかけだった。
この2人によってライブにて黒いサウンドを取り入れることに成功
その成果は『ビーチ・ボーイズ・イン・コンサート』(1973年)にてあらわれる。

しかしブルース・ジョンストンがこのアルバムの制作開始時に脱退する。
当時のマネージャーであったジャック・ライリーとの確執が原因だった。
これによってアルバムのソングライター面での戦力低下が起きてしまう。

そこで、ここでは作曲面で前作頑張らなかったデニス・ウィルソンが頑張る。
6.8作曲し、ボーカルも担当する。
8曲目は曲としてかなり水準が高い。

ビーチボーイズで面白いのは、
基本的に誰かが頑張らなくなったら、
それまで頑張らない人が頑張りだすということが起きていることだ。
ブライアン・ウィルソンが頑張らなければ、
誰かが危機感をもって頑張る。
ビートルズのように温度差の程度はあれど
常にメンバー全員が頑張ればいいのだけれど、
そうならないところがこのグループの
(音楽的にはあまり嬉しくないけど)ある意味、面白いところ。

アルバム・タイトルは、彼らがビーチ・ボーイズに改名する前に名乗っていたバンド名の一つ。
このアルバムの出来に自身がなかったのか、
発売当初、『ペット・サウンズ』と2枚組として発売された。
抱き合わせである。
この発売の仕方は謎といえば謎だが、
おそらくこのアルバムが売れる自信がなかったのだろうと考えられる。

おそらくカール・ウィルソンが主導的にこのアルバムを制作したのだろう、
そのせいなのだろうか、
ややアルバム『ワイルド・ハニー』(1967年)に作風が似ているようにも思える。
サウンドはリッキー・ファッターがドラムを担当した影響か、
ややファンク要素が入るようになった。
また新加入した2人はこのアルバムで2曲(2、5ともに2人の共作)提供している。
ただその2曲は楽曲として冴えているわけではない。
何よりもビーチボーイズの魅力であった爽やかさもやや減って、
そういった意味でリッキー・ファッターの加入は良かったことか、難しい。

個人的には前述のデニス・ウィルソンの曲がまず最初に聴きどころで
4.といったキャッチーなナンバーもいい。
ビーチボーイズのツッコミどころが多い曲があるという欠点は減ったが、
サウンド面や特有の魅力も減ったアルバム。

1.ユー・ニード・ア・メス・オブ・ヘルプ・トゥ・スタンド・アローン – You Need A Mess Of Help To Stand Alone
2.ヒア・シー・カムズ – Here She Comes
3.ヒー・カム・ダウン – He Come Down
4.マーセラ – Marcella
5.ホールド・オン・ディア・ブラザー – Hold On Dear Brother
6.メイク・イット・グッド – Make It Good
7.オール・ディズ・イズ・ザット – All This Is That
8.カドル・アップ – Cuddle Up

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