ボブ・ディラン 『血の轍』


血の轍(紙ジャケット仕様)

1975年1月17日発売。
ボブ・ディランは古巣の大手レコード会社コロンビアに戻って来た。
一度コロンビアへ離れてからわずか約2年。
コロンビア側は『プラネット・ウェイヴズ』
(1974年1月17日、ボブ・ディラン自身初のアルバムチャート1位獲得)と
1974年1月から2月に行われた21カ所40公演も行われたザ・バンドとのジョイントコンサート、
そのライブの模様を録音した『偉大なる復活』(1974年6月20日)の好成績を評価したと思われる。
ボブ・ディラン側も勝手知る古巣である大手レコード会社の高待遇の契約で動かされたと思われる。

1974年9月に移籍後初のアルバムはニューヨークでレコーディングを行われ、
完成したかに見えたが
発売予定の直前になって、
12月に急遽、アルバム収録曲の半分5曲をミネアポリスでレコーディングをし直す。

アルバム全体的には
スピード感のある楽曲が並び、バックで支えるバンドのサウンドと演奏が心地よい。
サウンドは王道のAOR感が少しあるフォークロックで
60年代の自身のフォークロック作に比べて落ち着きと洗練さを感じる。
ボブ・ディランの成熟した歌唱を感じさせる。

それにしても収録曲のひとつひとつの曲の完成度が高い。
ポップソングとして完成度の高さはいちにを争うレベルで
ポップスとボブ・ディランらしいラフな個性や癖がうまい具合にバランスを取れている。
バランスの良さがこのアルバムの魅力となっている。

ニューヨークの録音だけでも、十分に完成度があるのにも関わらず、
ミネアポリスで録音し直したことで更に完成度が増している。
ラフな状態でアルバムを発表することが多いボブ・ディランであって
どうしたのだろうか。厳しいポップスの作りこみを行っている。

またアルバムの構成が分かりやすい。
前半にアルバム収録曲の中で
派手で、わかりやすい、明るい曲を前半に持っていき、
後半に従って、穏やかで、翳りのある、リリカルな曲を置いている。
ボブ・ディランのアルバムとしては珍しい、
アルバム構成がとても作為的なのがアルバムの完成度を高めている。

このアルバムをボブ・ディランの最高傑作とする人も多い。
僕はこのアルバムをそれほど熱心に聴くことはないのだけれど、
たしかに入り口として入りやすいと思う。

1.ブルーにこんがらがって – Tangled Up in Blue –
2.運命のひとひねり – Simple Twist of Fate –
3.きみは大きな存在 – You’re a Big Girl Now –
4.愚かな風 – Idiot Wind –
5.おれはさびしくなるよ – You’re Gonna Make Me Lonesome When You Go –
6.朝に会おう – Meet Me in the Morning –
7.リリー、ローズマリーとハートのジャック – Lily, Rosemary and the Jack of Hearts –
8.彼女にあったら、よろしくと – If You See Her, Say Hello –
9.嵐からの隠れ場所 – Shelter from the Storm –
10.雨のバケツ – Buckets of Rain –

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