岡村靖幸 『OH! ベスト』


OH!ベスト

2001年3月28日発売。
『早熟』(1990年3月21日)に続いてのベストアルバム。
『早熟』が『yellow』『DATE』『靖幸』とその時期のアルバム未収録曲を集めたものに対し、
今作はさらに後の『家庭教師』『禁じられた生きがい』と
その時期とその後のアルバム未収録曲まで範囲を伸ばし
Epic・ソニー時代の作品を網羅したもの。
岡村靖幸自身は今作を発売することに乗り気ではなかったとされるが、
結果的に彼のキャリアをバランス良く網羅できる作品となっている。

Epic・ソニー時代(1986年~2001年)は彼のキャリアを代表している。
このアルバムリリース後、
岡村靖幸はユニバーサル(2003年~ 2008年)に移籍し
アルバム『Me-imi』『ビジネス』をリリースするが、
まるで彼自身が混沌しているような歌唱が象徴されるように、
今思い返せば、この時期はやや迷走気味に活動をしていたと考えられる。
そして3度目の逮捕後、
彼は落ち着きを取り戻したかのように
インディーズ(2010年~)で再出発する。
『エチケット』(ピンク・パープル)『幸福』をリリース、
ライブコンサートは毎年行われると
現在、岡村靖幸は円熟期を迎え精力的に活動している。

このアルバムで特筆すべき部分は
岡村靖幸のキャリアでも重要かつ強力なアルバム未収録の4曲が収録されていることだ。
これらは元々シングル曲としてリリースされたもので
この4曲が聴きたい場合、
実質的にはこのベスト盤でしか聴けないような状態になっている。
(「ハレンチ」1996年、「セックス」1999年、「真夜中のサイクリング」2000年、「マショマロハネムーン」2001年の4曲)
(このアルバム以外ではEpic・ソニー時代でリリースされた音源をできる限り
すべてまとめられ、限定販売された
『岡村ちゃん大百科』にしか収録されていない)

このアルバムは
強力な4曲が聴きたい人にとって大事なアルバムであると同時に、
初めて岡村靖幸を聴いてみたいと思った人にとっては
入門盤として一番おすすめ作品となっている。

レビュー4曲作詞・作曲・編曲:岡村靖幸
「マシュマロ ハネムーン」編曲:岡村靖幸、オオエタツヤ

マシュマロ ハネムーン★★★★☆
岡村靖幸 Feat. Captain Funk(オオエタツヤの別名)という名義で
このベスト盤と同時発売でシングルとして発売される。
イントロのベースは目新しく岡村靖幸の曲では聴けない音色を出している。
(歌詞カードにあるように)
オオエタツヤによる貢献の可能性がある。
メロディーはポップで歌詞も幸福的である。王道のJpopとして聴ける。

ハレンチ★★★★
援助交際について歌った曲。
この時期は援助交際をメディアが社会問題として取り上げられていたことを
僕も当時の子どもながらにして覚えている。
歌詞の内容は、そういった行いをしている女性を嘆いている。
援助交際に反対するというより嫌い悲しんでいる。
違う立場の人(上から指摘するような男)として批判することなく、
悲しさを出すことで共感性の高い内容になっている。
このベストアルバムに入っているミックスは(Thank you Takabashi-MIX)となっており、
ミックスは岡村靖幸と井上一郎が行っている。
エンディングが冗長である。
シングルのミックスの方が優れている。

PVもしっかりと作られていて
そこには、やせた岡村靖幸が踊っている姿が見られる。
1995年の時点では彼は岡村靖幸 LIVE TOUR ’91を
行っていた頃とは比べることが出来ないくらい
太っていた。
そこから1年で激やせしたということなのだろうか。
僕はこの映像は1991年頃撮影したものを使っているのではと
思ったことがある。

セックス★★★★★
なんて熱量の高い曲なのだろう。
この曲を完成させるために、まる2年間沈黙していたんじゃないかというくらいエネルギーを感じる。

歌詞の内容はかなり危険である。
この唄のタイトルの意味は
性行為でなくジェンダー、男女差別についてという意味。
「どこまでいっても女性のあなたは女性としての役割から逃れないんだよ」
というメッセージが曲全編にわたって歌われる。
そこに少し性的な部分も少し匂わす歌詞を加えることで、オリジナルティーが大変高い歌詞になっている。

1999年当時まだProTools(やDAWといった音楽制作そのものをコンピューターで進める)音楽制作では普及しきれていなく、
早い時期で実戦投入されていると思われる。
ここでは石川鉄男がオペレーターとして担当している。
そのためかサウンドは熱量に比べ上手く整理をされていて
その整理され具合はユニバーサルの時期と対照的になっている。

完成度の高い曲を作ろうとして寡作になった。
そんな説得力がある曲。

真夜中のサイクリング★★★★★
淡泊に続くリズム、ミックスで曇らせている抑揚的(に聴こえるがそうではない)ボーカル。
そのためメロディーも抑揚的に聴こえる。
曲自体に閉鎖感を感じる寂しさを作り出している。

歌詞からは
今の閉塞的な状況から抜け出したい、
でも結局はなにも良いことが起きない、
状況を抜け出そうという気持ちだけを抱えて
真夜中のサイクリングをしているという
という救いのなさが絶望感と閉鎖感が切なくさせる。

音楽は量より質だといわれたら、納得せざるを得ない強力な4曲である。
「ハレンチ」「セックス」「真夜中のサイクリング」とリリースの時系列順に並んでる流れはまるで
当時の岡村靖幸の心境をドキュメンタリーとして見ているようで
少しホラーがかっているが、魅力的だ。

コメント

  1. 井上一郎 より:

    ハレンチのシングルバージョンの方を好んでくれてありがとうございます^_^

タイトルとURLをコピーしました