ボブ・ディラン 『ザ・ブートレッグ・シリーズ第9集:ザ・ウィットマーク・デモ』


ザ・ブートレッグ・シリーズ第9集:ザ・ウィットマーク・デモ

2010年10月19日発売。
1962年~1964年にかけて
音楽出版社へ楽曲を登録するために録音された弾き語りのデモ音源集。

ボブ・ディランは音楽出版社、リーズ・ミュージック社、
その次に乗り換えたウィットマーク&サンズに向けて録音していた。
目的は著作権による楽曲の登録、
その登録された楽曲を様々なアーティストに歌ってもらうためである。
実際このデモ音源から
ピーター&ポールマリーが「風に吹かれて」(全米2位)、
バーズが「ミスター・タンブリン・マン」(全米1位)を歌ってヒットさせる。

この一連のデモは音楽業界人への売り込みのため、アセート盤(レコード)にして
多数の人に送られていた。
そして音源はかなり早い時期に海賊版として出回っていた。

そうしたデモ音源が
ザ・ブートレッグ・シリーズ第9集となり、公式盤としてまとめられた。
Disc 2-2、15、16が『ブートレッグ・シリーズ第1~3集』、
Disc 2-1が『ノー・ディレクション・ホーム:ザ・サウンドトラック(ブートレッグ・シリーズ第7集)』に
収録されていたのだが、それ以外はすべて正規で初出。

1962年~1964年はボブ・ディランがバンドを従わず、
フォークスタイルで弾き語りをして活動していた時期で
オリジナルアルバムでもほとんど、
ボブ・ディランの弾き語りのみをレコーディングをしていた。
そのためオリジナルアルバムに収録されている楽曲のアレンジは
オリジナルアルバムの音源と比べてあまり変わらない。

正規レコーディングでなくデモ音源の弾き語り集なのだが、
個人的には思いのほか音質が良いと思った。
音質的少し厳しい音源もあるが、
全体的にノイズが少なく、すっきりしている曲が多い。
販売する際、聴きやすいように音源を修正したのだろうか、
この音質的に「聴ける」と思ったことが
デモとはいえ、
この頃のボブ・ディランは弾き語りのスタイルが正規のレコーディングだったためのに加えて
そこまでデモという感じが個人的にしないと感じた。
ただそれでもこの弾き語りの時期はそれなりに渋く、
ましてデモ、性格的にはアウトテイク集に近いのこのアルバムは、
マニア向けの感は否めない。

余談なのだが、
例えばジョン・レノンにも
『ジョン・レノン・アンソロジー』『ラヴ〜アコースティック』といった
大量の弾き語りのデモ音源があるのだが、
それらは音質的に結構厳しく、
デモだから仕方ないと割り切って聴くことがあって
音楽として聴くことが難しいな、と感じることがある。
ボブ・ディランのこのアルバムが音楽としてかなり聴けるのは
僕がボブ・ディランを聴く姿勢としては
もしかしたら演奏がまずあって、
その上で楽曲、メロディーという順番で聴いているからなのかもしれないと感じた。
それに対してジョン・レノンの場合は
楽曲、メロディーがあって、
その次に演奏という順番で聴いているのかもしれない。
僕は二人が比較的近い性質のシンガーソングライターと思うときがあるが、
意外と違う聴き方をしているんだなと実感した。

デモ音源といったらオリジナルアルバムと大きくクオリティーの低く、
音質が劣った作品みたいになるが、そういった感じにならず
ボブ・ディランの演奏と歌の上手さを感じることができた。
キャリア初期のボブ・ディランの勢いある演奏は聴きごたいがある。
1962年~1964年のボブ・ディランのオリジナルアルバムを楽しめる人には
十分楽しめると思う。

1.路上の男 – Man on the Street (Fragment) –
2.辛いニューヨーク – Hard Times in New York Town –
3.プアー・ボーイ・ブルース – Poor Boy Blues –
4.バラッド・フォー・ア・フレンド – Ballad for a Friend –
5.ランブリング・ギャンブリング・ウィリー – Rambling, Gambling Willie –
6.ベア・マウンテン・ピクニック大虐殺ブルース – Talking Bear Mountain Picnic Massacre Blues –
7.スタンディング・オン・ザ・ハイウェイ – Standing on the Highway –
8.路上の男 – Man on the Street –
9.風に吹かれて – Blowin’ in the Wind –
10.ロング・アゴー、ファー・アウェイ – Long Ago, Far Away –
11.はげしい雨が降る – A Hard Rain’s a-Gonna Fall –
12.明日は遠く – Tomorrow Is a Long Time –
13.ザ・デス・オブ・エメット・ティル – The Death of Emmett Till –
14.レット・ミー・ダイ・イン・マイ・フットステップス – Let Me Die in My Footsteps –
15.ホリス・ブラウンのバラッド – Ballad of Hollis Brown –
16.なさけないことはやめてくれ – Quit Your Low Down Ways –
17.ベイビー、アイム・イン・ザ・ムード・フォー・ユー – Baby, I’m in the Mood for You –
18.バウンド・トゥ・ルーズ・バウンド・トゥ・ウィン – Bound to Lose, Bound to Win –
19.オール・オーヴァー・ユー – All Over You –
20.アイド・ヘイト・トゥ・ビー・ユー・オン・ザット・デッドフル・デイ – I’d Hate to Be You on That Dreadful Day –
21.ロング・タイム・ゴーン – Long Time Gone –
22.ジョン・バーチ・パラノイド・ブルース – Talkin’ John Birch Paranoid Blues –
23.戦争の親玉 – Masters of War –
24.オックスフォード・タウン – Oxford Town –
25.フェアウェル – Farewell –

Disc 2
1.くよくよするなよ – Don’t Think Twice, It’s All Right –
2.その道をくだって – Walkin’ Down the Line –
3.アイ・シャル・ビー・フリー – I Shall Be Free –
4.ボブ・ディランのブルース – Bob Dylan’s Blues –
5.ボブ・ディランの夢 – Bob Dylan’s Dream –
6.スペイン革のブーツ – Boots of Spanish Leather –
7.北国の少女 – Girl from the North Country –
8.七つののろい – Seven Curses –
9.ヒーロー・ブルース – Hero Blues –
10.ワッチャ・ゴナ・ドゥ? – Whatcha Gonna Do? –
11.ジプシー・ルー – Gypsy Lou –
12.エイント・ゴナ・グリーヴ – Ain’t Gonna Grieve –
13.ジョン・ブラウン – John Brown –
14.オンリー・ア・ホーボー – Only a Hobo –
15.船が入ってくるとき – When the Ship Comes In –
16.時代は変る – The Times They Are a-Changin’ –
17.パス・オブ・ビクトリー – Paths of Victory –
18.ゲス・アイム・ドゥーイング・ファイン – Guess I’m Doing Fine –
19.連れてってよ – Baby, Let Me Follow You Down –
20.ママ、ユー・ビーン・オン・マイ・マインド – Mama, You Been on My Mind –
21.ミスター・タンブリン・マン – Mr. Tambourine Man –
22.アイル・キープ・イット・ウィズ・マイン – I’ll Keep It with Mine –

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