ザ・ビーチボーイズ 『ペット・サウンズ』


ペット・サウンズ(MONO & STEREO) +1

1966年5月16日発売。
良くも悪くもビーチボーイズを代表し
ビーチボーイズの『サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド』
のような位置付けられるアルバム。
そのアルバムと関連して、
コンセプト・アルバムの先駆として評論されることがある。

このアルバムの評価が高いのは、
確かに中身のサウンド、
そしてこのアルバムにまつわる逸話によるものも大きいけれど、
それ以外の要因もかなり大きい。
今回はそれ以外について書こうと思う。

まずアルバムの量と構成が
ビーチボーイズとしては珍しく「まとも」であることが大きいと思う。

収録曲は13曲、時間にして36分と現在のアルバムの水準にして、
一枚のアルバムの形としても
まともな、違和感のないアルバム収録曲数、収録時間となっている。

まず曲数が13曲と多くビーチボーイズとしては異例。
それ以前のアルバム収録曲はレコード会社の事情やノルマの関係で
LP(レコードのアルバム)を出すには12曲であった。。
しかも時間数が30分超えるアルバムはそれまでは
ライブ・アルバム『ビーチ・ボーイズ・コンサート』(32分11秒)と
実質スタジオライブ・アルバム『ビーチ・ボーイズ・パーティー』(31分10秒)
しかなく、時間も異例。
しかもオリジナル・アルバムでは時間数を更新。
ライブ・アルバム以外のオリジナルアルバムは皆無と考えられる。
ビーチボーイズの、スタジオアルバムは約25分前後、
現代の基準的にはミニアルバム程度の長さである。

ちなみに60年代前半のビートルズのオリジナル・アルバムは
14曲収録で30分前半程。
嘘みたいな話だけれど、
このおよそ収録時間の5分の差は
後世に名盤としてアルバムを評価される際に、
大きな差となっているのではないだろうかと僕は考えている。

それとこのアルバムは構成がしっかりしている。
『ペット・サウンズ』は当初、LP(レコード)で発売された。
LP(レコード)で考えた場合に分かりやすい。

A面
素敵じゃないか – Wouldn’t It Be Nice –
僕を信じて – You Still Believe in Me –
ザッツ・ノット・ミー – That’s Not Me –
ドント・トーク – Don’t Talk –
待ったこの日 – I’m Waiting for the Day –
少しの間 – Let’s Go Away for Awhile –
スループ・ジョン・B – Sloop John B –

B面
  神のみぞ知る – God Only Knows –
  救いの道 – I Know There’s an Answer –
  ヒア・トゥデイ – Here Today –
  駄目な僕 – I Just Wasn’t Made for These Times –
  ペット・サウンズ – Pet Sounds –
  キャロライン・ノー – Caroline, No –

A面とB面の最後から2曲目に収録されている
「少しの間」と「ペット・サウンズ」はインストルメンタルである。
そしてA面とB面の最初「素敵じゃないか」「神のみぞ知る」
と最後の曲「スループ・ジョン・B」「キャロライン・ノー」は
アルバムの自信作となる曲を置いている。
実際このA面B面の最初と最後の4曲はシングルとして発売されている。
そこから、残りのアルバム収録曲は流れとして違和感のないように置かれる。
この構成がアルバムとして完成度を高めている。

このアルバムが評価されている理由は僕としては
1.アルバムの構成がビーチボーイズとしてこのアルバムはとりわけ秀逸
2.このアルバムに関する伝説(逸話)が作りやすい
3.サウンド
となると思う。
これが僕なり結論だ。

ビーチボーイズのアルバムといえばこの『ペット・サウンズ』で、
というよりビーチボーイズが好きな人以外には
残念ながらこのアルバムしか知られていない。
余談だけれどある作曲家同士の集まりの飲み会で
YMOやCOLDFEET、ボーカロイドといったダンスやエレクトリックなものを
とりわけ好んで聴いていた人がいた。
そのときに自分が持っているアルバムのリストを見せてもらった機会があって、
数多くのEDMやR&Bが並ぶ中で、ビーチボーイズのこのアルバムだけはリストに入っていた。

このアルバムは、よくロックの名盤で登場し、
それぐらい評論家には激賞され、
ビーチボーイズを評論する際、
「ビーチボーイズ=ペット・サウンズ」と語られ、
その発展でペット・サウンズの大部分を
作ったブライアン・ウィルソンが天才となり、
「ビーチボーイズ=ブライアン・ウィルソン」
という考えがひとり歩きすることとなっている。

でもさあ、おかしいでしょ。
ビートルズだって『サージェントペパー』が好きな人がいて、
その前に発売されているレコーディング手法、技術的には
発展途上とされる『ラバーソウル』がベスト、最高傑作という人がいるわけで
そのことには特に異議が出てこないけれど
ビーチボーイズだけ
「ペット・サウンズが最高傑作でなければならない」ことになっている。
やはりビーチボーイズはビートルズ程聴かれていない証拠で、
ビーチボーイズの音楽の素晴らしさを語る場合、
どうしても『ペット・サウンズ』の逸話か、
ブライアン・ウィルソンを天才だということにして
話さければならないという、寂しいことがおきている。

ビーチボーイズの音楽は素晴らしいから、
少しでも『ペット・サウンズ』一辺倒の聴かれかただけでなく、
その他のアルバムも聴いてもらいたいと
僕はひそかに願っている。

1.素敵じゃないか – Wouldn’t It Be Nice –
2.僕を信じて – You Still Believe in Me –
3.ザッツ・ノット・ミー – That’s Not Me –
4.ドント・トーク – Don’t Talk (Put Your Head on My Shoulder) –
5.待ったこの日 – I’m Waiting for the Day –
6.少しの間 – Let’s Go Away for Awhile –
7.スループ・ジョン・B – Sloop John B –
8.神のみぞ知る – God Only Knows –
9.救いの道 – I Know There’s an Answer –
10.ヒア・トゥデイ – Here Today –
11.駄目な僕 – I Just Wasn’t Made for These Times –
12.ペット・サウンズ – Pet Sounds –
13.キャロライン・ノー – Caroline, No –

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