ザ・ビーチ・ボーイズ 『サンフラワー』


サンフラワー

1970年8月31日発売。
ビーチボーイズファンの評価の高いアルバムで
ビーチ・ボーイズ70年代の代表的なアルバムとして挙げられる。
60年代前半のビーチ・ボーイズのアルバムが
太陽と浜辺と風の爽やかさを感じる気持ちよさなら、
このアルバムは日差しの穏やかさを感じさせる心地よさに例えられると思う。

レコード会社をキャピトルからワーナーへと移籍する。
その少し前に印税関連でビーチボーイズ側はキャピトルに訴訟を起こしていた。
その結果、ビーチボーイズ側は
1965年の『パーティー』以降の配給権を手にすることが出来たが、
それまで発売したアルバムすべてを廃盤にされてしまう。
加えて当初はこのアルバムは
1970年5月に発売する予定だったけれど、
ワーナー側からアルバムのクオリティー面が弱いと指摘され、
発売を延期し新たな6曲のレコーディングをする。
そういった、いざこざがあった状況下でこのアルバムは発売された。

内容としてはビーチボーイズとしては
珍しくチームプレイを感じさせるアルバムで
一枚岩になっているようにイメージができる。
それを象徴する曲が
3.になるのだろう。
ボーカルをメンバーで持ち寄って、
コーラスが聴きどころだとアピールしている曲は
その得意な声の美しさ、楽曲の強度から
説得力を持たせている。

またブライアン・ウィルソンが提供した曲が冴えていて、
穏やかさを感じさせる曲が多いことが逆に
ソングライターとして実力、底力を十二分に感じさせている。
それでも60年代の全盛期のブライアン・ウィルソンではないのだろう。
ただ自分の持っている出来る限りの才能をこのアルバムでは
最良な形で抽出して貢献できるように徹しているように見える。
そのかつてのソングライター面を補強したのが
主にデニス・ウィルソンとブルース・ジョンストンで
ここで聴かれる2人の曲は
アルバムを埋めるだけの曲は作らず
聴く人を夢見心地をさせてくれるポップスとして仕上げて見せている。

ただこのアルバムはビーチ・ボーイズが
もともと人気低迷していた時期に発売したとあって、
売り上げはアメリカのアルバムチャート最高151位と
ビーチボーイズの歴代のアルバムのワースト記録を更新している。
それに加えて、
もしかしたらアルバム収録曲に
インパクトのある、タフで力強い曲が少なかったことも
アメリカでは受けなかった要因ではないだろうかと思われる。

丁寧に作られたリリカルな水準の高い曲が並んでいる。
前作『20/20』の方が曲単位の聴きどころと強力な曲が多かったと
僕は考えている。
ただ『サンフラワー』あって、『20/20』ないものとしたら、
それはアルバムの統一感とアルバムに感じられる色なのだろう。
穏やかな幸福感を感じられるジャケットから
アルバムの色彩が内容が一致していて
期待に答えてくれているという意味で、
アルバムを手にした満足感が大きい。
そうした満足感がこのアルバムをファンの間で人気が高い理由なのだと思う。

1.スリップ・オン・スルー – Slip on Through
2.ディス・ホウル・ワールド – This Whole World
3.アド・サム・ミュージック・トゥ・ユア・デイ – Add Some Music to Your Day
4.ガット・トゥ・ノウ・ザ・ウーマン – Got to Know the Woman
5.ディードリ – Deirdre
6.イッツ・アバウト・タイム – It’s About Time
7.ティアーズ・イン・ザ・モーニング – Tears in the Morning
8.オール・アイ・ウォナ・ドゥ – All I Wanna Do
9.フォーエヴァー – Forever
10.アワー・スウィート・ラヴ – Our Sweet Love
11.アット・マイ・ウィンドウ – At My Window
12.クール・クール・ウォーター – Cool, Cool Water

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