1975年7月1日発売。
1966年9月ボブ・ディランはバイク事故を起こした。
実際は当時のあまりの多忙による体調不良という説があって、
本当にバイク事故を起こしたのかどうか、疑わしい部分が多分にあるが、
ともかくボブ・ディランは活動を休止する。
ウッドストックに家を構え、休息をしていた。
またウッドストックの家の近くに
ホークス(ザ・バンドの前身、以後ザ・バンドと呼ぶ)のメンバーたちも薄いピンク色の家に滞在する。
彼らはその家をビックピンクと名付ける。
そうこうしてボブ・ディランはビックピンクでザ・バンドと
音楽活動のリハビリ、音楽出版の楽曲登録を兼ねて
演奏をする。
1967年6月からビッグピンクでザ・バンドと2トラックのテープレコーダーで録音し、
およそ150モノのテイクが録音された、らしい。
僕はあまり同意しないのだが、
この頃のボブ・ディランの行動を
自分とアメリカ音楽を求道者のように見つめていたと評される。
こうしたまとまった音源は、流出して海賊版を出される。
その海賊版対策としてリリースすることを決める。
一見、ただそのまま録音されたテープをそのまま
放り出して発売したように感じさせるが、
そうでもなくモノラルのテープから演奏を抜き出し、
ミックスでステレオ化し
曲によってはオーバーダビングを行っている。
シュールであるが、このアルバムのラフな地下室を感じさせるジャケットは、
実はセロニアス・モンク『アンダーグラウンド』(1968年)を参考にしているあたり、
巧妙にマーケティング立てて、加工され世に出ている。
だいぶ後になりボブ・ディランの公式アーカイブとなるブートレグシリーズで
ボブ・ディランとザ・バンドが出来る限りそのまま演奏した形では
『ザ・ベースメント・テープス・ロウ:ブートレッグ・シリーズ第11集』(2014年)として発売されている。
カントリーロックを感じさせる演奏が基調にある。
それでいて例えば同時期にレコーディングされた
カントリーロックのアルバム、
バーズ『ロデオの恋人』(1968年)に比べて骨太なサウンド。
その上でブルースの要素がある。
音質に難があるとされているが、僕はそこまで気にならない。
たしかにこのサウンドと演奏で正規レコーディングして欲しかったという気もあるが、
むしろこの演奏と歌唱の空気感がこのアルバムの世界観にもなっていて、
カッコよさを感じる部分もある。
24曲中8曲はザ・バンドによる演奏でボブ・ディランは参加していない。
歌唱はバングラデシュコンサートに近い声をしていて、
カントリーの要素は『ジョン・ウェズリー・ハーディング』でさらに進むのだが、
『ジョン・ウェズリー・ハーディング』と違って、この骨太な演奏が魅力なのだろう。
そういう意味で、ファンの中でもこのアルバムは評価が高い。
僕もこのアルバムの演奏はかなり魅力的だと思っている。
disk1
1.オッズ・アンド・エンズ – Odds and Ends –
2.オレンジ・ジュース・ブルース – Orange Juice Blues (Blues for Breakfast) –
3.100万ドルさわぎ – Million Dollar Bash –
4.ヤズー・ストリート・スキャンダル – Yazoo Street Scandal –
5.アカプルコへ行こう – Goin’ to Acapulco –
6.ケイティは行ってしまった – Katie’s Been Gone –
7.ロー・アンド・ビホールド – Lo and Behold! –
8.ベッシー・スミス – Bessie Smith –
9.物干しづな – Clothesline Saga –
10.リンゴの木 – Apple Suckling Tree –
11.おねがいヘンリー夫人 – Please, Mrs. Henry –
12.怒りの涙 – Tears of Rage –
disk2
1.なにもないことが多すぎる – Too Much of Nothing –
2.おもいぞパンのビン – Yea! Heavy and a Bottle of Bread –
3.エイント・ノウ・モア・ケイン – Ain’t No More Cane –
4.堤防決壊(ダウン・イン・ザ・フラッド) – Crash on the Levee (Down in the Flood) –
5.ルーベン・リーマス – Ruben Remus –
6.タイニー・モントゴメリー – Tiny Montgomery –
7.どこにも行けない – You Ain’t Goin’ Nowhere –
8.ヘンリーには言うな – Don’t Ya Tell Henry –
9.なにもはなされなかった – Nothing Was Delivered –
10.ドアをあけて – Open the Door, Homer –
11.長距離電話交換手 – Long Distance Operator –
12.火の車 – This Wheel’s on Fire –
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