1982年5月21日発売。
佐野元春初期の代表作。
『BACK TO THE STREET』『Heart Beat』に続き、3部作の3作目である。
プロデュースは今作で初めて佐野元春自身担当。
コ・プロデュースは 伊藤銀次が務めており、
佐野元春が集中して音楽制作に取り組めたことを伺える。
このアルバムでは沢田研二の『G.S.I LOVE YOU』(1980年12月23日)
からの提供曲が2曲「I’m in blue」「Vanity Factory」あり、
先にシングルとして発売されていた「DOWN TOWN BOY」(1981年10月21日)は
佐野元春自身でアレンジし直してある。
同時並行して『NIAGARA TRIANGLE Vol.2』(1982年3月21日)を
制作している中であり、またツアーの最中であり、非常にタイトなスケジュールの中で制作されている。
”僕らはツアーもやっていたから、ツアー先からスタジオに帰ってくるような生活だった。
当時、佐野君と「こんなに働いてるロックンローラーは他にいないよね」という話をしたことを覚えてる。”
https://www.moto.co.jp/SOMEDAY/wire/02.html
サウンドはフィル・スペクターのウォール・オブ・サウンドを意識したものとされているが、
どちらかというとその影響を受けた
ブルース・スプリングスティーンのアルバム『明日なき暴走』を意識しているのだと思われる。
音の壁を作ろうとしているところは
レコーディングではアコースティックギターが複数(2~4人)、
しかもそのアコギがあまりはっきり聞こえないところ、
コーラス、生ストリングを壮大に入れて音の隙間を埋めようとしているところを挙げられる。
ミックスでは吉野金次が担当。
吉野金治なりのウォール・オブ・サウンドを構築を試みている。
レコーディングとミックスの結果、演奏と声の輪郭を適度になくしローファイ感を出すことに成功している。
特にストリングを使用している曲に顕著。
歌詞カードには
INTRODUCTIONというショートショートの小説があり、このアルバムの世界観を深めている。
この小説に出てくるブルーバードは果たして今何をしているのだろうか。
01.Sugar time★★★★
コーラスの掛け声、ストリングの美しさ、ポップなメロディー、
Jpop(当時にはない言葉だが)の王道に沿った、しかし洗練された言葉
ポップなナンバー、シングルヒット曲を狙ったと本人も言っているが
それもうなづける曲。
はじめはポップな歌詞でなかったそうで、制作の過程でどんどんポップになったことが伺える。
”最初はまったく違う歌詞でした。たとえばストーンズみたいなタイプの辛口の歌詞だったんですよ。
でも、曲はとてもキャッチーだったから、もう少しポップな歌詞に変えることはできないかな、と思ったんです。
これについてはかなり議論した記憶がありますが、最終的には佐野君が納得して書き直してくれました。”
https://www.moto.co.jp/SOMEDAY/wire/06.html
02.Happy Man★★★☆
「ただのスクラップにはなりたくないんだ」「お前のトーチライトで夜を照らそう」といったフレーズ
、この歌に出てくる表現が佐野元春らしい
個人的には江口寿史の漫画『ストップ!! ひばりくん!』で出てくる曲として思い出され、時代の空気感を味わえる。
03.DOWN TOWN BOY★★★☆
この曲はアルバムバージョン、
シングルバージョンは大村雅朗が編曲を担当。
歌詞の内容はある意味、前曲「Happy Man」に似ている。
こちらの方がストレートな言い回しをしていて分、ロック色が強くなるはずなのだが、
アレンジがストリング、コーラスを壮大にいれそうならないのところに、
アルバムにおける佐野元春のセンスとバランスを感じられる。
04.二人のバースディ★★★★
シンプルな曲であるが、
上品さを感じるメロディー、歌詞、アレンジ
によって聴いたときにポップソングの素晴らしさを与えてくれる。
ありそうでなかなかない幸福感溢れる作品。
05.麗しのドンナ・アンナ★★★☆
アルバムには11曲中6曲も生ストリングが使われているが、
特にこの曲でストリングの美しさを堪能できる。
サウンドと演奏の美しさを痛感させる曲。
06.SOMEDAY★★★★☆
代表曲。
歌詞のテーマは「純粋さを守ること」なのだろう。
主人公はいつ破られそうな約束、それでも守り続けようとする意思の強さ、
そして「約束してくれた君」を信じようとする部分にイノセンスを
感じさせる。
この曲にはアコースティックギターの担当者が3人もいるが
個人的には聞こえない。
なおSOMEDAYにストリングが入っているが、アルバムのクレジットには
書かれていない、書き忘れなのだろうか。
07.I’m in blue★★★☆
ミドルテンポのポップソング。
沢田研二『G.S.I LOVE YOU』に提供した曲のうちの1曲。
1984年に吉川晃司がカバーしている。
佐野元春自身が歌っているバージョンがもっともポップである。
08.真夜中に清めて★★★
スローバラード。
ストリングが絡んでいる中で、ドラムのエッジのかかった音色が心地よい。
アルバムが丁寧に制作されていることを実感できる一曲。
09.Vanity Factory★★★☆
アルバムの中でもっともストレートなロック調の曲。
それでもタイトルが「Vanity Factory」で
イントロにジャズテイストのピアノ演奏が出て
アコースティックピアノが全面で目立っている、
歌詞の場面にピアノでジャズ演奏されているバーが出て
またそこの洗練された言葉づかいが佐野元春を表している。
もともとは沢田研二の提供曲。
コーラスに沢田研二が参加している。
10.Rock & Roll Night★★★★★
このアルバムの最重要曲でありテーマ。
街にはそれぞれの人の生活、そこから生まれるノイズがあり、
歌の主人公はその中から輝く何かを探そうとしている。
輝く何かはイノセンスなのか、
主人公本人さえそれすら何なのか分からないが
歌では「Golden ring」と表現している。
その何かを探している主人公は実は孤独で、
それでも街の喧騒の中で
何かを探している、見つかるまで永遠に。
と僕なりに解釈したが、説明すると味気ないが
歌ではメロディー、演奏、佐野元春独自のストーリーテラーで
壮大なスケールで歌い上げる。
間奏、語りのようなところから盛り上がるサビの部分が圧巻。
個人的には少し疲れが残っていたある日の朝、この曲を聴き、
窓ガラスから見える朝日を浴びたビルの並ぶ街の情景、
そしてそこから一日はまた始まるという
実感を噛み締めた記憶が今でもある。
11.サンチャイルドは僕の友達★★★☆
シンプルな弾き語りのような歌。
重厚な「Rock & Roll Night」のあとに来るのが絶妙。
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