Mr.Children 『BOLERO』


BOLERO

1997年3月5日発売。
このアルバムは『深海』と同時進行で制作されている。
11曲中6曲がシングル曲となっていて、
半分ベストアルバムのようになっているのだけれど、
当時のミスターチルドレンのスケジュールでは、
クオリティーを維持するためには
『深海』もそうなのだけれど、こういった
戦略的に何とか上手く形にすることでしかアルバムを作れなかったのだと思う。
それでもシングルとして発売されたアルバムの収録曲も
また水準が高く聴きごたえがある。

王道のJpopとしての趣が強い一方で
アルバムの収録曲全体としても決して明るさ一辺倒ではなく、
ジャケットにあるような、
いい意味でのお花畑の美しさと花がもっているどこか切なさ、
そして少女の表情から想像するノスタルジーさを
このアルバムは持っているのだと思う。

個人的にはベストアルバム
『Mr.Children 1992-1995』『Mr.Children 1996-2000』(共に2001年7月11日)
でミスター・チルドレンの音楽が気に入ったら、
『Atomic Heart』(1994年9月1日)かこのアルバムをお勧めするアルバムである。

作詞:桜井和寿(インストを除く全曲)
作曲:桜井和寿(1 – 9・11・12)、桜井和寿 & 小林武史(10)
全楽曲編曲:小林武史 & Mr.Children
オーケストレーション:中西俊博(1・11)

1.prologue ★★
1分弱のボレロ調のインストゥルメンタル。
前々作『Atomic Heart』、前作『深海』と
洋楽にアルバムの構成をヒントにしていたけれど、
今作もまた、
あえて洋楽アルバムを当てはめるとしたら
ビートルズ『サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド』
を意識した構成になるのだろうか。
アルバム冒頭がショーの幕開け、テーマのリプライズをアルバムの最後から2番目に置き、
そしてアルバム最後にアンコール・ナンバーとして
とっておきの強力な曲を置く意味では、
一応、つながる。
さらにアルバム全体を劇の一つとして
アルバムを見せようとしているところも共通している。
この曲の最後が
さらに『サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド』の
最後の曲「ア・デイ・イン・ザ・ライフ」
のオーケストラ部分を思わせるところから見て、
あながち的はずれでないと思う。

もっと述べると、
ジャケットもまた
『サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド』
を意識しているのではと思われる。
上が青空の色で、中央に黄色を意識、下に緑と配色が近似している。
僕としてはミスチルサイドが
『サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド』
を意識したアルバム作りをしているから、
ジャケット制作側にも意識したデザイン作りにして欲しいと
要望を出したのではと推測している。
それと並行してアルバムタイトルはジャケットに対して要望した時点で
「BOLERO」とすることを決まっていたから
スペイン起源のボレロから
アンダルシアのひまわり畑をイメージした背景となったと思われる。
巧いつなげ方だと思う。

2.Everything (It’s you) ★★★☆
1997年2月5日発売。
ハード・ロック・アレンジのバラード。
「幸せすぎて大切なことが分からなくなった
今だから歌う言葉さえも見つからないまま」
という一節が僕として心に残る。

約3年の間、大きく商業的に成功して続けてきた
Mr.Childrenを投影しているように聞こえる。
このシングル発売後、
Mr.Childrenは約1年間の活動を休止し、
次のアルバム『DISCOVERY』(1999年2月3日)
では作風を変える。

3.タイムマシーンに乗って ★★★☆
派手な演奏のようできっちり
王道のJpopとして演奏が整理されていて、
特に堅実なドラミングが心地よい。

4.Brandnew my lover ★★★
性愛の要素が大変強い曲である。
歌詞の言葉にきわどいところもあって、
桜井和寿の若さを感じる。

5.【es】 〜Theme of es〜 ★★★★
シングルとして1995年5月10日に発売。
ややあざとく仰々しいストリングス、
書こうとしたテーマや書こうとした内容に比べて、
可愛げがある言葉が特徴的で、
そのことが楽曲のサウンドや言葉の内容の重さを軽くしている。

6.シーソーゲーム 〜勇敢な恋の歌〜 ★★★★
シングルとして1995年8月10日発売。
アップテンポの王道のラブ・ソング
ただ、Cメロの「アダムとイヴの時代~といった下りが、
シングル『CROSS ROAD』(1993年11月10日)以降の
スケールを大きくしようとするMr.Childrenを感じる。

7.傘の下の君に告ぐ ★★★☆
ドラムが打ち込みのように加工されているのが、心地よい。
Cメロの下りは
多忙でややハイになっている桜井和寿を僕は感じ取っている。

8.ALIVE ★★★☆
苦悩はするけれど、ポップソングでは
結局はこれ以上は言えないという限界も感じる。
この限界を感じてから、どうするのかが作詞は光ると思う。
歌詞面だけでなく、
音を増やし華やかにしサウンドででも
徐々に暗闇からかすかな光を感じさせる表現が面白い。

9.幸せのカテゴリー ★★★★
このアルバムは
シングル以外のアルバム収録曲が
社会の退廃と自身の堕落が根底にあって、
そこからマッチョに強がった表現の曲が並んでいた。
そうした中で
この曲は最も繊細さが出た曲となっている。
ただ曲を聴いて桜井和寿の活動の疲れを感じるというところでは共通している。

10.everybody goes -秩序のない現代にドロップキック- ★★★★
1994年12月12日にシングルとして発売。
ロックなアップナンバー。
もともとは「Tomorrow never knows」のカップリングになる予定だったけれど、
出来の良さから、シングルとして発売する。
様々な90年中ごろのサラリーマン、売り出しのモデル、子育て熱心な専業主婦を
ステレオタイプ的に羅列して
サビで「秩序のない現代にドロップキック」とテーマをいい、
しかし最終的に「皆 病んでいる 必死で生きている」と
万人受けの落としどころにする。
ロックな歌詞を書こうとしつつ、
結論、一般論になるというところが
ミスチルらしく、また「正しいJ-pop」らしい曲である。

11.ボレロ ★★☆
メロディーもあえて比べるとモーリス・ラヴェルの「ボレロ」に少し似ている。
意識して作ったのだと思う。

桜井和寿が「ボレロ」という曲を作り、
それをヒントにこうしたアルバム構成にしたのか、
それとも前述したように
ビートルズ『サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド』
のような構成を意識した上で作られたのか。
僕は前者だと思う。

11.Tomorrow never knows (remix) ★★★☆
1994年11月10日、シングルとして発売(ただしバージョンは違う)。
シングル『innocent world』(1994年6月1日)は193.6万枚と売れた。
『Tomorrow never knows』発売後であるけれど
12月にはレコード大賞も大賞を取った。
ある意味商業的に頂点を極めた中での発表。

ただバンドのメンバーをこの時、多忙を極めていて、
スケジュール上、
小林武史がドラムとベースを打ち込んでいる。
後にメンバーがレコーディングして、
ドラムとベースを差し替えたバージョンが
この「Tomorrow never knows (remix)」となる。

この曲はさらにその上の売り上げを記録、
ミスチルの中で最も売りあげを上げたシングルとなった。
個人的にはシングルバージョンの方がよく、
それがバンドメンバーの意向だとしても、
一般的に聴けないが残念に思う。
星3個半はアルバムバージョンの評価。
シングルバージョンはもっと高い。
シングルバージョンの方がボーカルの抜けがいい。

コメント

  1. tanuki より:

    やっぱりprologueはa day in the life を感じますよね!
    わかります、BOLERO a day~って調べたらこのブログ記事に行き着きました笑

  2. どらえもん より:

    最近更新がないですがお元気ですか?
    更新待ってます。

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