ビートルズ 『ビートルズ・フォー・セール』


ビートルズ・フォー・セール

1964年12月4日発売。
ビートルズの4作目のアルバムである。

スケジュール的にきつい、ビートルズの中でも
この時が最もきつかったらしく、
3作目『ハード・デイズ・ナイト』が
全13曲をオリジナル曲で固めているのに対して、
今作は1作目と2作目と同じ
オリジナル曲8曲・カヴァー曲6曲収録のスタイルとなっている。
さらにそれだけでは、アルバムを埋められず、
アルバムのクオリティーを維持するため、
かつてポール・マッカートニーが
デビュー前に作った「アイル・フォロー・ザ・サン」を引っ張り出し、
収録して、アルバムを完成させている。

内容は全体的にフォークロック色のアルバムである。
アルバム冒頭「ノー・リプライ」と
2曲目「アイム・ア・ルーザー 」の最初の2曲と
前作『ハード・デイズ・ナイト』の最初の2曲の違いがアルバム全体として出ている。
ただ1曲目「ノー・リプライ」は
当初から、この曲どおりの曲調を想定して作曲していたわけでなく、
曲として完成度を高める過程で曲調をメジャー調から、
マイナー調に変更したものである。
その過程はアウトテイク集
『ザ・ビートルズ・アンソロジー1』(1995年11月20日)で分かる。

またこのアルバムは曲調が前述の通り、
フォーク・ロック色であるため、
ボブ・ディランの音楽との類似性が言われることがある。
ビートルズのメンバーが初めてボブ・ディランを知り、
彼の音楽を聴いたのは
アメリカ上陸直前の1964年1月、フランス公演のホテルとなっている。
パリのホテルの中で時間を持て余していたビートルズのメンバーが
音楽を聴くべく、地元のDJが持っていた何枚かのレコードに
ボブ・ディラン『フリーホイーリン・ボブ・ディラン』があり、
聴いてみたところ、
メンバーたちはとても気に入り、レコードが擦り切れる程聴いたそうだ。

ただこのアルバム、特にジョン・レノン作曲にボブ・ディランの影響が
伺えると書かれることがあるけれど、
そのことに関しては、僕は少し疑問を感じていて、
影響があえてあるとしたら、
2.「アイム・ア・ルーザー」の歌詞の一部くらいで、
僕はボブ・ディランの影響は言われている程はないと考えている。
ちなみにボブ・ディランは「アイム・ア・ルーザー」のような
ストレートに内省的に自分自身のことを言及するタイプの曲は基本的に書かない。

逆にボブ・ディランがビートルズの音楽、このアルバム(に収録されている曲)
に影響を受けた可能性はそれなりにある。
ボブ・ディランは
『ブリンギング・イット・オール・バック・ホーム』(1965年3月22日)から
本格にロックバンドのサウンドを取り入れる。
そのアルバムのレコーディングは、1965年1月13日に始まる。
このアルバムを『ビートルズ・フォー・セール』とあえて比べた時、
2枚からサウンドにつながりを感じられることが出来ると思う。
もっともこのアルバムはアメリカでは未発売。
1964年当時、印税とマーケッティングの関係上、
アメリカではビートルズの本国イギリスと
同じアルバムが発売できなかったからだ。
そのため、アメリカでは同時期に収録曲が違うアルバムが発売されている。
『ビートルズ・フォー・セール』の曲が
多く収録しているアルバムを手にしたとしたら
アメリカでは『ビートルズ ’65』(1964年12月15日、)となる。

時系列を慎重に見ないで、
安易に同時期のボブ・ディランと比較すると、
見間違える可能性があると思う。
またビートルズとしては、
このアルバムに関しては、
意識的にアルバムでサウンドをどうするか明確に決めていたわけでなく、
アルバムの水準をできる限り高めた結果、
フォークロック色が強いアルバムとなったということが実情なのだと思う。

余談だけれど、アルバムの世界観としては内省的なアルバムで、
アメリカ版の『ラバー・ソウル』のような世界観に
偶然似ているところがある。
ビーチボーイズのブライアン・ウィルソンは
アメリカ版の『ラバー・ソウル』を気に入っていて、
その『ラバー・ソウル』で
『ペット・サウンズ』の作るインスピレーションを手に入れたという話がある。
もしこのアルバムを当時、手に入れていたら、
ブライアン・ウィルソンはどう感じたのだろうか。

ジャケットのデザインが美しい。
ただ被写体となっているビートルズのメンバーは疲れた顔している。
そのことがこのアルバムに寂しさを感じさせている。
オリジナル曲に円熟味を感じられ、カヴァー
全体的にリリカルと翳りを感じるアルバムの内容と上手く溶け込んでいる。
ジャケットどおりの光に包まれながらも寂しさを感じるアルバムである。

また、スケジュールの事情とはいえ、8曲とカヴァーが6曲のバランスがいい。
アウトテイクに「ユー・ノウ・ホワット・トゥ・ドゥ 」
「リーヴ・マイ・キトゥン・アローン」というオリジナル曲があるために、
もしかしたら、オリジナル曲で全曲固めることができたのかもしれない。
ただ、ビートルズにとってアルバムのクオリティーの水準を達しないために、
カヴァー曲を選んだのだと考えられ、
ここから僕はビートルズのアルバムに対する完璧主義を感じ取っている。
決して手の抜いたアルバムではない。

個人的には大学時代によく聴いていたアルバムであり、
「ハニー・ドント」という弱点以外は捨て曲はまったくない、
アルバムとしてクオリティーが高いアルバムである。
この曲はもともとはジョン・レノンがボーカルを担当していた、
ジョン・レノンが歌えば、
このアルバムもフォーク・ロックの決定盤のひとつと
してもっと評価されていたかもしれない。
アルバムとしての人気が低いことが不満であった。

1.ノー・リプライ – No Reply
2.アイム・ア・ルーザー – I’m a Loser
3.ベイビーズ・イン・ブラック – Baby’s in Black
4.ロック・アンド・ロール・ミュージック – Rock and Roll Music
5.アイル・フォロー・ザ・サン – I’ll Follow the Sun
6.ミスター・ムーンライト – Mr. Moonlight
7.メドレー:カンサス・シティ – Kansas City ~ ヘイ・ヘイ・ヘイ・ヘイ – Hey, Hey, Hey, Hey
8.エイト・デイズ・ア・ウィーク – Eight Days a Week
9.ワーズ・オブ・ラヴ – Words of Love
10.ハニー・ドント – Honey Don’t
11.エヴリー・リトル・シング – Every Little Thing
12.パーティーはそのままに – I Don’t Want to Spoil the Party
13.ホワット・ユー・アー・ドゥーイング – What You’re Doing
14.みんないい娘 – Everybody’s Trying to Be My Baby

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