ORIGINAL LOVE 『風の歌を聴け』


風の歌を聴け [ ORIGINAL LOVE ]

1994年6月27日発売。
ORIGINAL LOVEはもはや、田島貴男のソロユニットとなっているのだが、
1995年まではメンバーがいて、バンドとした形になっていた時があった。
このアルバムの時には田島貴男の他に、
メンバーに木原龍太郎、小松秀行がいた。
このアルバムは多彩さを見せながら、
全体の印象的に聴くとファンク色を感じるAORとなっている。

その印象を踏まえた上で
ビートの強さと洗練された音が90年代の音を感じる。
80年代のAOR風味の邦楽が好きな視点で見ると
このサウンドは簡素化された、
使い古されたパターン、ときにはテンプレのような物足りなさを感じる。
しかし90年代のAOR風味の邦楽が好きな視点で見ると
80年代のAOR風味の邦楽は野暮ったい洋楽から
消化しきれていないサウンドだと感じるので、
結局好み次第と行き着くことになる。

そういった意味で、ORIGINAL LOVEは
少なくてもこの当時は
それまでにはない新鮮さを感じる音楽として受け入れられたはずだ。

ORIGINAL LOVEはミュージシャン、
それ以上に音楽評論家に好かれるアーティストとして知っていた。
実際このアルバムの2017年9月16日現在のWikipediaはかなり充実している。
僕は長い間、「接吻」「プライマル」しか曲を知らなかった。
これだけサウンドを消化してポップスとしてアルバムを作っている。
職人さを感じられるところが、評論家に好かれるところなのだろう。
機会があれば、また別のアルバムを聴きたいと感じた。

作詞作曲 田島貴男
except  9.作詞 : 木原龍太郎  作曲 : 木原龍太郎・田島貴男 
4.作曲 : 木原龍太郎・田島貴男
7,8.作曲 : 田島貴男、小松秀行
編曲 オリジナル・ラヴ

1.The Rover
僕はこの曲を初めて聴いたとき、
スガシカオに似てる曲だなと素直に思った。
スガシカオがデビューするのはこのアルバムの後のことで、
こちらの早いのだが、
スライ&ファミリーストーンからファンク感を上手くJpopに消化している
ということなのだろう。
イントロ808の打ち込みの音がするので、
田島貴男、あるいはオリジナルラブなりのJpopのファンクとはこうだと示していると感じた。

2.It’s a Wonderful World
ソウル色を感じる。全編で田島貴男はファウルセットで歌っている。

3.The Best Day of My Life
セルジオ・メンデス&ブラジル66の「マシュ・ケ・ナダ」を感じた。
いや僕がサンバを深く聴いていないからこういうことになるのだろうけれど
サンバを取り入れたサウンドである。

4.二つの手のように
AORとニューミュージックを上手く織り交ぜた曲。

5.フィエスタ
セカンドラインを取り入れている。
ここまで1~5まで巧みに違うジャンルの曲を並べている。
多彩さとそのことを丁寧に消化した姿勢が
このアルバムに感じられ、
そのことが音楽評論家に好かれる要因なのだろうと思った。

6.心 ANGEL HEART (album mix)
繊細さを感じる。
シングル『朝日のあたる道 AS TIME GOES BY』のカップリング。

7.時差を駆ける想い
ジャズ色を感じる曲、ただJpopとして聴くのなら、
ここから少しダレはじめたなというのが感じたので
ここらでインパクトのある曲が少し欲しいと感じた。

8.Two Vibrations
ファンクナンバーで一発録りで、スタジオライブに近い。
ギターを間違えた箇所があっても直さないとしている。
ただやはりそれは聴く人に委ねているもので、
修正して完成度が高まるのなら、修正等の作りこみをしてもらいたいと思った。

9.Sleepin’ Beauty
前曲「Two Vibrations」がライブ感、演奏を中心にしていたからか、
サビがポップなメロディーだと感じる。

10.朝日のあたる道 AS TIME GOES BY (album mix)
1994年4月27日、シングルとして発売された。
それをアルバム用にミックスを変えて収録されている。
シングルバージョンと比べると演奏、歌唱を中心に聴かせている。
シングルバージョンの方が出来はいい。

内容は王道のポップス。
けれど、ORIGINAL LOVEの個性も感じられる。
曲について様々なことが語れるけれど、
ここでは僕が端的に感じる。
サビの歌詞について語りたいと思う。

サビの歌詞の出だしは
「いつの日より 今の君が一番いとおしい」
となる。

先頭の一文字だけ、韻を踏んでいる。
唄で韻を踏む方法は頭の一文字を合わせるだけない。
後ろを合わせる方法もあるし、
母音だけを同じにする、センテンス全体で似ている言葉を合わせる
と様々である。

僕はサビの前半の韻のつけ方に、
「い」という言葉に韻を付けるために言葉を選んだと考えている。
しかしそうした韻の乗せ方は
僕としては聴いていて、韻の乗せ方としては
必ずしも上手く機能していないのではないかと考えている。
個人的には正直に書くと、この言葉選び、
ややあざとらしさ、たどたどしさを感じる。

また「いとおしい」という言葉、
「いとおしい」と乗っているメロディーは
仮に「愛してる」と歌詞を乗せても、
メロディーとしては一応は合う。
その中であえて「いとおしい」という言葉を選んでいる。

これも韻の「い」に合わせていると見れる。
ただそれとは別に言葉の意味合いとして、
「いとおしい」と少し距離を置いたいいかたをしている表現が
「愛している」に比べ、求愛者に対して距離を置いた言葉遣いである。

サビの内容は
ストレートな求愛のメッセージ、
けれど言葉そのものはどこかやや距離を置いている、
韻の使い方もややたどたどしく、またあざとさと合わさって、
そのことが
いい意味でややすまして熱くなりすぎない涼しく振る舞おうとするキザな主人公像をもたらしている。

僕はこの曲が欲しくてこのアルバムを手に入れた。
エンディングのコーラスを聴いた後、
いつも曲の心地よさを実感させられる。

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